山形大学公開講座の案内

山形大学の河野銀子さんからジェンダーに関する公開講座の案内(オンライン開催)のお知らせが送られてきた。河野さんは、山形大学教育学部教授で、理事特別補佐(男女共同参画)。専攻は教育社会学、ジェンダー研究。学生は参加費無料とのこと。

<国の第5次男女共同参画計画策定に関わったこともあり、教育分野を中心に扱おうと思っています。内容的にビギナー向けなので、周囲にご関心のある方がいたらご案内いただければ幸いです。概要は添付の通りで、内容の詳細は山形大学本学HPにも掲載されております(学生は無料)>

https://www.yamagata-u.ac.jp/jp/files/3716/2278/9160/6.4.pdf#page=7

「風の便り」への礼状

辻先生。「風の便り」25号、26号をお送りいただき、ありがとうございます。26号では、船橋浜町の綺麗な昔の写真とともに、昔の風景が描写されていて、楽しく読ませていただきました。これを読ませていただき、私の昔住んでいたところは、どのように移り変わり、現在どのようになっているのかということにも、思いを馳せることができました。

私が幼いころから約30年間住んだ総武線の下総中山駅周辺は、法華経寺もあり、昔ながらの街並みが続いているように思います。10年くらい前に、中山小学校の同窓会で、同級生と一緒に訪れた時は、あまり変わっていなくて、時代に取り残されたレトロな町という印象でした。「さく壁読書会」の開かれていた隣の本八幡駅前は、市川市の市役所もあり、昔から賑やかでしたので、以前とあまり変わらないかもしれませんね。私がこの前本八幡に行ったのは、数年前のことですが、昔よく「さく壁」の仲間と行った喫茶店はもうないと思いますが、もしかした、時々行ったトンカツ屋はまだ残っているかもしれません。1度、訪ねてみたくなりました。私が結婚して住んだ千葉市美浜区の高浜地区は、昔潮干狩りをした場所を埋め立てて、そこに住宅公団が大規模な団地を造ったところですが、そこは、京葉線の開通、新駅の開設、その周りに大型スーパー・イオンや商店街、さらに中層・高僧マンソンも次々にでき、人工海浜の「稲毛海浜公園」も整備され、千葉とは思えない(?)おしゃれな街になっています。このような昔を思い出させてくれる「風の便り」に感謝します。

私自身、この間、普段とあまり変わらない生活を送っています。週に2~3回卓球、週1でテニス、遠隔で授業を1コマ、授業の準備と学生のレポートを読んで、それへのコメントを書くことをしています(毎週70名)。週1回くらいに敬愛大学に行き、研究室の草木に水をやり、図書室で新聞や雑誌を読み、本を借り、時々、理事をしている中央教育研究所のオンライン会議に参加。先々週は新型コロナのワクチン注射の1回目を行きつけの医院で打ち、翌日テニスを休みました。先週の土日は「日本子ども社会学会」のオンラインの大会に、卓球を休んで参加しました。このようにこの間、少し忙しく、「季節の花」を見に行ったり、ブログを更新ができず、少しストレスが溜まっています。「(メールの返信やブログの更新がなく)元気ですか(生きていますか)?」と友人からメールをいただいたりしています)。「風の便り」の御礼と近況報告まで。お元気で、お過ごしください。(6月17日 武内清)

「昭和の森公園」(千葉市)に蛍を見に行く

私の幼い頃は、千葉でも近所の田んぼや湿地でホタルを見ることができたが、最近ではそのような場所はほとんどない。四半世紀前、UWのマディソンに滞在していた時、アパートの裏に多数のホタルを見たのを思い出す。ネットで「ホタル観賞」で検索してみると、首都圏でもいくつかの箇所が表示される(https://www.jalan.net/news/article/340546/)。最初に出てくる「ホテル椿山壮」は、東京文京区にあるが、ディナーが一人15000円とある。うちではこのような高価なところに行けるわけがない。

千葉市では6月5日と6日に「昭和の森公園」で午後7時から8時半までホタル観賞会がある(参加費無料、1時間100円の駐車料金のみ)というので、家族で出かけた。家から車で50分。ホタルの見える湿地の近くは、蓮池があり(夕方には蓮の花は閉じてしまい開花した花を見ることはできなかったが)、菖蒲が綺麗に咲いていた(下記)。

蛍(源氏ボタル)は、暗くなると、ところどころに飛んでいるのが見え、見たのは10~20匹程度であるが、それなりに楽しめた。(もっとも、見に来ている人は200人くらいいたからホタルより人の方が多かったが)。子ども(孫)たちにとっては、ホタルを見るのははじめての経験で、思い出に残ることであろう。

カズオ・イシグロ『クララとお日さま』を読む

カズオ・イシグロ・土屋政雄訳『クララとお日さま』(早川書房、2021.3)を読んだ。内容も訳もよく読み易い本だが、私の読書力が落ちていて、440ページ読むのに3日もかかった(その間、アジサイを見に行ったり、卓球をしたり、ズーム会議に参加したりはしたが)。カズオ・イシグロの著作の翻訳(日本語訳)のある8冊目の本のようだが、『私を離さないで』や『日の名残り』との共通点も感じた。誰かに仕えるロボットや執事のように、自分の分をわきまえた謙虚な生き方が描かれている。(人間以上の)、人工的なロボットの純粋さ、健気さに、そして哀しい結末に心打たれる。いろいろなことを考えさせられる小説だが、その余韻に浸りながら、新聞やネットに載った感想を読んだ。共感したものを転載する(ネタバレもあるので、未読の人は注意)

 ■型落ち「人工親友」の献身と信仰/ ノーベル文学賞を受賞し、世界的な作家の仲間入りをしたイシグロの6年ぶりの新作は、高度な人工知能を搭載した人型ロボットが語る近未来SF小説だ。/ ショートヘアで浅黒い肌のクララは、売れ残りの型落ちながら、ずば抜けた洞察力と高い共感力を備えている。買ってくれたのはジョジーという10代前半の少女とその家族。彼女の「人工親友」としての使命をまっとうすべく、クララは献身的に尽くし始める。/ 人間の孤独や愛の概念の学習には、ジョジーと幼馴染(おさななじみ)リックとの関係はうってつけの教材だ。だがジョジーは病弱な上、観察するに乗り越えがたい社会的格差が将来を夢見る二人の幸福を阻んでいるらしい……。そこでクララは持てる力のすべてを駆使し、ジョジーの救済に奮闘するのだ。/ イシグロは本作で、どんなに高い知性の持ち主でも、客観的事実を否認し、妄信に陥ってしまう可能性があることを丁寧に描く。太陽光を自身のエネルギー源とするクララは、ジョジーによかれと太陽に願掛けし、突飛(とっぴ)な行動にも出るが、そこに根拠は希薄だ。/ 「お日さま、どうぞジョジーに特別な思いやりを」/ またリックは、一種の優生思想により個性を尊重されずにもがいていると、読者は知る。こうした、認知の歪(ゆが)みというテーマは、著者の初期の代表作『日の名残り』に、科学技術革新の栄光とその影とのテーマは、映画化もされた『わたしを離さないで』に通じるだろう。平易であたたかな語り口に終始しながら、物語がつきつける現実は苦みがある。クララがピュアであるだけに、不穏なムードは際立つ。/ 苛烈(かれつ)を極める競争原理、閉鎖的なコミュニケーションが特定の信念を強化させるエコーチェンバー現象など、分断を生みがちな現代社会のありようへの警告ともとれる本書。クララの「その後」を読者がどう想像するか。人間とは何かとの問いかけが、読後の脳内に響きわたるだろう。/ 評・江南亜美子(書評家・京都芸術大学専任講師)(朝日新聞 デジタル 2021年4月3日より転載)

*病弱な少女とアンドロイドの話。人工親友ロボットのクララはずば抜けた観察力と学習意欲で日々成長していく。病弱の少女に優しい心で接して家族同然の関係を築いていくが、少女の成長により不要になると物としてあつかわれてしまう。前作の「わたしを離さない」でと同じで悲しくなってくるな。病気の娘のアンドロイドを作って代わりをさせたり、貧富の差による社会の細分化など問題が提起され読み返したくなる。/ *氏の作品は、特に盛り上がる場面は少ないはずなのになぜか引き込まれる。 本作では語り手のクララの鋭い観察力が印象的。「私を離さない」でもそうだったが、氏は心の機微を表すのがとても上手いと思う。メインテーマは心の存在だと思うが、この作品での答えは「特別なものはその人を愛する人にある」と言うことか。ラストは少し残酷な気もするが、クララとの決別による大人への成長と感じた。/ *《向上処置》を受けた子供の将来は安定し、受けていない子供は大学進学さえ難しい世界。処置のために病弱になったジョジ―のもとに来たAF(人工親友)クララは、常にジョジ―のための最善を考え行動する。一方、母親は娘が亡くなってしまった場合のコピーとしてクララを育てようともくろんでいる。表紙も文章も優しい児童文学の様相だが、実は奥深く切ない内容だった。著者の「私を離さないで」や、亡くした子供の身代わりロボットとして作られた「鉄腕アトム」のことを思い出した。どこまでもまっすぐに皆の幸せを願うクララの清らかさが悲しい。/ 母親、父親、メラニアさんやリックと同じくらいジョジーのことを思い、誰よりも正しくジョジーの幸せを願うクララはとても優しかった。クララの思考は常にジョジーに尽くすためのもので、人のちょっとしたサインによく気づいたり、隅々まで配慮された発言をしたり、AFとして作られたクララは大成功だったと思う。この本を読んでいたら、クララのように不純さのない正しい思考ができるのがAIなのかもしれなくて、人類滅亡を企むAIだとか陰謀論だとかをおもしろおかしく想像するのが人間であると較べてしまった。今後世界はどちらに向かうのか…(「読書メータhttps://bookmeter.com/books/17416961より転載」」