大学の授業料無償化、奨学金問題

高等教育や大学関係のことでは、ミクロな大学生の心理や意識やミドルの大学の授業のこと以上に、制度的なことや経済的なことは重要なことであろう。

具体的に経済的なことでいえば、大学の授業料の無償化や奨学金のことがある。その実際について私はあまり知らない。多くの人も同じであろう。今の大学の奨学金や授業料免除が740億円なのが、これから10%に増額される消費税を財源として7600億円になるという。そして無償になる大学の選定他、制度的な問題も多くあるという。

日本高等教育学会会長の小林雅之氏(東京大学名誉教授・桜美林大学教授)が、今日の毎日新聞で、この問題に関してわかりやすく解説している。下記にその記事を掲載しておく。

日本教育社会学会第71回大会から学んだこと(その2)

 先輩や同期また大学を退職した後輩から、「近頃の学会は面白くなくなった。出席する気がおこらない」という声をよく聞く。困ったことに(?)、浅学菲才の私は、まだ学会発表から学ぶことが多い。今回の日本教育社会学会の大会での発表を聞き、教えられたこと、気になったことを書き留めておきたい。

1 「不利な状況下にある若者」を実証的に研究するのに、「日本で育つ定住外国人」が日本の若者の先端事例として取り上げるという研究があり、その視点が面白いと思った。さらに高校卒業者を「早期離学者」とし、その先の高等教育を受けない「不利な状況下にある若者」に分類する視点が現代的と感じた。(山根麻衣「早期離学者はどのように大人になるのか」

2 同じ人に時期をずらして同じ質問をするパネル調査の報告がいくつか見られたが、その調査結果からは相関関係だけでなく因果関係(原因―結果)まで明らかにできるということであるが、それはどのような分析をするのであろうか。まだよくわからない。報告を検討したい。

3 佐藤香・山口泰史「若者の生活満足度の変化の様態とその規定要因」は、高卒の14年・15回に渡るパネル調査の分析で、データ蒐集の大変さ、分析の緻密さとデータの陰にあるものまでの考察(たとえば、続けて答えてくれる人はどのような人なのか)があり感心した。若者生活満足度を従属変数にして、それを規定する要因を多変量分析で探っている。(私たちも、大学生活満足を従属変数にして、それを規定する要因を多変量で探ったことがある。)ただ、(私たちの調査も含め)心理的な移ろいやすいものしかも個人的なものを、従属変数にするのは、どうなのだろうという疑問は感じた。

4 澤田稔「批判的教育学に基づく’未来カリキュラム‘に関する一考察」(課題研究「カリキュラムの社会学のこれから」)は、アップル門下の批判的教育学研究者の澤田氏が教育社会学のカリキュラム研究に対する評価を発表要旨に丁寧に書かいていて、読み応えがある。

5 各国の思考方法やその表現方法には国の文化が反映しているという渡邉雅子氏の報告は興味深かった(課題研究「カリキュラムの社会学のこれから」)。目的―手段の系列で結果から時間を逆向きに辿り原因を探るアメリカ。フランス革命の伝統があり、公権力の誤謬を正す論理性を身につけ、共和国の価値に合致した行動を至上とするフランス。状況的判断を重んじ、感情を共有し、共同対型能力を重視する日本。これらが各国のカリキュラムや実際の教育にも反映しているという。

6 山本雄二氏の「教育知と主体―歴史教科書への『慰安婦問題』記述を例に」(課題研究「カリキュラムの社会学のこれから」)は、従軍慰安婦に関する教科書の記述、高校教科書では1992年度検定版、中学校教科書では1995年度検定版から、日韓関係の変化に伴い大きく変わったことを、具体的な教科書の記述から明らかにしている。その内容の変化を、「個人主義的主観論」や「抽象的客観論」(M.バフチン)から「生きた言葉」「空白を埋める応答」「主体の召喚」への変化と解釈している(現在はまたもとに戻りつつあるが)。教育方法だけでなく、教科書の知識が学ぶもの相互性や主体性を喚起するアクティブなものかどうかを問う視点は、きわめてユニークで示唆的なものである。

現代の学生の夏休みの過ごし方

今の大学生は、夏休みをどのように過ごしているのであろうか。そのような調査はあるのかもしれない。また大学差や学年差もあることであろう。ここでは、私が授業で,敬愛大学教育こども学科の1年生39名に、質問した結果を報告しておきたい。

質問「夏休みにやったことすべてに〇をつけてください」(回答39名)

(宿泊を伴う)旅行 19名  日帰り旅行 9名  海外旅行 2名  花火見学 20名 (劇場での)映画鑑賞 20名  映画「天気の子」鑑賞 16名 コンサート 5名  部活、サークル活動 20名 スポーツをした 14名  カラオケに行った 23名  アルバイトをした  30名  読書をした  14名  ゲームをした 22名  その他(デズニーランド3名、ボランティア、免許合宿、海、釣り、キャンプ、漫才、マージャン、友達の家、楽団、イラスト制作、各1名)

 アルバイトの額

5万円以下 5名  6~9万円 3名、  10~14万円 12名、15~19万円 3名  、20万円以上 3名(最高 40万円)

今の大学生が夏休みにいろいろなことをしていることがわかる。部活・サークル活動は約半数。「天気の子」を観た学生も半数、海外旅行は2名と少ない(他大学ではもっと多いであろう)。

この中で一番多いのが「アルバイトをした」の30名(77%)である。そのアルバイトの額は10~14万円が一番多い(20万円以上も3人いる)。時給900円で1日6時間働いたとして、12万円稼ぐには22日間アルバイトする必要がある。つまり夏休みの半分はアルバイトで過ごしたことになる。今の学生に、「長い夏休みはいいね」と言えない現状がある。

日本教育社会学会71回大会に参加する。

9月12日、13日に教育社会学会第71回が大正大学で開催され参加した。ただ、懇親会は今回はじめて欠席した。体力的に自信がなかったからである。大会には私より年上は2~3名(望月さん、大淀さん、塚田先生)しか見かけなかったように思う。同期で見かけたのは久冨氏くらいである。

高齢者が大会に参加するメリットは何であろうか。私の場合で考えてみると、昔から親交のある懐かしい人に会えるというのが一番である。学会でもないと人に会う機会がない。昔からの友人や知り合いに一言~三言言葉を交わすだけでうれしい。それから学会発表を聞いていて、旧い世代の伝統はしっかりと次の世代に受け継がれていることを感じるのも喜びである。学会運営についてもそれは言える(ただ、総括討論が十分なされていないという評議委員会での岩見氏の指摘は当たっているように感じた)

をさらに、研究の最先端も学ぶことができる。統計的分析では、最新の手法で目の覚めるような明解な結果を知ることができる、質的な調査をしてデータの蒐集にかける時間の多さとその分析のみずみずしい感受性を感じる、比較研究も外国に住みその知識と思考を深く理解している考察がある、外国の理論の最先端の紹介などにも感心する。

課題研究は、「カリキュラムの社会学のこれからを問う」を聞いたが、教育社会学の手薄の分野での報告者の澤田稔氏(上智大学)、渡邉雅子氏(名古屋大学)、山本雄二氏(関西大学)の報告と広田照幸氏(日本大学)のコメント(添付)が素晴らしく、いろいろ考えさせられた。

OASYS、QUEENについて

かっての教え子に音楽好きの人がいる。私がOASYSやQUEENについて、ブログに(無知な)短い文章を書いたところ、長文のコメントを送ってくれた人がいる。了解を得て、その一部を転載する。

いつも先生のブログを拝見しており、OASYSのことを書かれていたので(少し前に、QUEENのことも書かれていましたよね!)ぜひ、連絡してみようと思っていたのですが、台風以来、しばらくブログが更新されていなかったので、控えておりました。ご無事で何よりです。

OASYSは、東京でやったコンサートにはほとんどいっています。今年の5月でしたか、千葉の幕張で行われた「Noel Gallagher’s High Flying Birds」(OASYSはNoel GallagherとLiam Gallagherの兄弟が主要メンバーだったのですが、兄弟げんかが絶えず解散し、その後、お兄さんのNoelが始めたバンドです)のコンサートにも、行ってきました。先生が指摘した、「労働者階級の洋服」という記述に、改めて「そうだったか…」と思いました。彼らのファッションや階級のことは全く気にしていませんでした。ですが、OASYSが人気を持ち始めたころ、同時期にデビューしたBlurというバンドとしばしば比較されていたことを思い出しました。Blurは中産階級出身のメンバーなので、当時、イギリスでは労働者階級VS中産階級と騒がれたとか。ジョン・レノンが「working class hero」という曲を書いており、オアシスのメンバーもたまにインタビューでその話をしていますが、OASYSやビートルズは、イギリスでは、ワーキングクラス・ヒーローなのだそうです。

ブレイディみかこさんという方がこんな記事を書いています。https://news.yahoo.co.jp/byline/bradymikako/20150226-00043362/ 

OASYSの「Don’t Look Back in anger」という曲は、日本のテレビCMにも使われたことがあり、ファンでなくても知っている人が多いのですが、イギリスでは「国歌」といわれることもあるそうです。2年ほど前ですが、マンチェスター・アリーナで行われたアリアナ・グランデのコンサート後、自爆テロ事件が起きました。その後、現場となった場所に追悼に訪れたある女性がこの曲を歌い出し、周囲の人たちを巻き込む大合唱となったそうです。このガーディアンの記事は、その動画も見ることができ、市長のコメントまで載っています。この曲は、先日のNoel Gallagher’s……のコンサートでも演奏され、会場内がやはり大合唱になりました。

https://www.theguardian.com/uk-news/2017/may/25/dont-look-back-in-anger-becomes-symbol-of-manchester-spirit

で、クイーンの話です……。中学後半から高校時代は、イギリスのパンクロック(これこそ、労働者階級の魂の叫び的音楽です)にはまり、大学時代からはレゲエやソウル、OASYSなどブリティッシュ・ロックといろいろ移り変わり、大学を卒業後ですが、現地でライブをみるためにイギリスに1人で何度も行きました。クイーンはもちろん知っていましたが「ヒット曲だすねー」「フレディ、死んじゃったね」くらいの認識でした。小学5年生の息子を連れて「ボヘミアン・ラプソディ」の映画を観に行ったところ、ドはまりしてしまいました。ライブさながらの雰囲気がよかったようです。映画を観おわった後、「あのシーンのあの曲がよかったよねー」と、息子と意見が一致し、「ああ、子育てしてきてよかったな」と心から思いました。今は、気乗りのしない宿題をやるときは、必ずクイーンのCDをかけるようになり、また、息子の小学校では、「自主学習」というテーマ自由の宿題があるのですが、これがでると、クイーンの曲の歌詞をプリントアウトし、わかる単語をピックアップして意味を書いたり、訳を調べたりして提出していました。