『大学就職部にできること』

若い研究者が次々と素晴らしい本を出している。ただ、読書離れが進んでいるし、大学図書館や公共図書館も財政難で本の購入を抑えるようになっているので、どのくらい購入数が伸びるかが心配。
上智大学卒、東大大学院卒(教育学博士)の大島真夫氏(東大社会科学研究所助教)が最近出版した本(『大学就職部にできること』勁草書房、2012年7月)は、今の若者の就職難の時代に、役立つ本であることは間違いない。
大島氏の博士論文がベースになっているが、とても読みやすく書かれている。指導教授の苅谷剛彦氏の論やこの分野の第1人者の本田由紀・東大教授の論を批判したり、スリリングな内容だ。
ただ、題(『大学就職部にできること』)が堅いのが気になる。「大学キャリアセンターにできること」「大学キャリアセンターにできないこと」「大学にキャリアセンターはいらない」などの題の方が、時代受けして、売れたのではないか。
 「1万部売れたら、印税が入るので、おごりますよ」と、本人から言われたので(?)、購入を皆さんに勧めたい。

曖昧なグレーゾーンが大切

Shinya talk らの転載
「私は旅をしていて国境と国境の間のグレーゾーンとおぼしき土地や島に足を踏み入れることがあるが、国と国との関係はそのグレーゾーンという不分明な時空によってお互いの沽券をなんとか保っているということがある。
というよりグレーゾーンというのは摩擦を引き起こすゾーンでもありながら互いの為政の方法によっては国境間の摩擦を避けるための潤滑ゾーンになっているとも言えるわけだ。
だが昨今、マルかバツかという二者択一的な気分が普通の人々の中にも横行し、その中庸というものが失われつつある。」(http://www.fujiwarashinya.com/talk/index.php)

今日は、千葉は、雨が降ったり止んだりで、はっきりしない天気であった。
しかし、夕方、大きな虹が空を覆い、しかも二重の虹で、さわやかな気分になった。

これからの大学 (思うこと)         

少子化で18歳人口が減少している中で、学生の確保に、各大学は必死になっている。パイが少なくなっているので、これまで以上に、また他大学以上に努力しないと、これまでと同じ数の学生や同じ質の学生を確保できない。
伝統のある国立大学、偏差値の高い大学、ブランドの私立大学は人気があり、定員割れを起す心配はないが、それらの大学も安閑としていると、入学希望者は減り、入試倍率が下がり、学生の偏差値や質も落ちてくる。
学生の大学選びの基準は、偏差値やブランドが相変わらず優位であろうか、それ以外の基準も段々優位になっている。東京大学の理Ⅰや理Ⅱに入るよりは、別の国立大学の医学部に入る方が、将来の職業を考えるといいと考える学生も多くなっているであろう。学校の教員になるのなら、有名大学に入るよりは、有名度や偏差値が低くても、国公私の教育学部や子ども学科に入学する方が、確実に教員免許が取れて、教員になれる確率は高い。
今、若年者の就職が厳しくなっている中で、資格が取れ、その資格を確実に就職に生かせる学部・学科に人気が出ている。教養志向の大学は、一部のブランド大学を除き、苦戦している。
 私立大学は、その収入源の多くを入学してくる学生の払う学納金(入学金、授業料、施設費、入学検定料等)に依存しているので、入学者が減るということは、致命的なことである。そこで、何とか、入学希望者を増やそうとさまざまな策を考え実行する。
 ただ、入学の敷居を低くして入学者を増やすことの対しては、大きなジレンマがある。それで何とか学生を確保できるかもしれないが、「誰でも入れる大学」という評判が立ち、次年度に入学希望者は減る、少なくても勉学意欲のある学生は、来なくなる。学生確保の施策(全員入学)が、次年度の学生確保を困難にするのである。
大学の良い評判を維持するためには、入学を希望しても、学力や意欲の低い学生を落とす入試戦略が必要である。しかし、それは、大学に経済的余裕がないと出来ない。
 経済効率を考えれば、学力・意欲の高い学生の確保→質の高い教育→就職実績の向上、大学の評判の向上→学力・意欲の高い学生の確保(以下同じ)が理想的だ。
 これからの大学について、いくつか、思いつくことを挙げてみたい。
1 入学してきた学生に、社会に出た時役立つ資格を取らせる。語学検定資格、保育・教員資格、看護資格、福祉関係の資格、スポーツ指導員資格、カウンセラー資格など、とにかく就職に役立つ資格を取らせて、さらにその資格に基づく職業に就けるように指導する。「就職にいい大学」という評判をもらえるように努力する。
2 学生に高い教養や専門的知識の基礎を身に付かせる。社会が大きく変化している中、実務的な知識や技術はすぐ陳腐化する。それより、どのような状況にも対応できる教養、専門的基礎を教育する方が、社会に出て役立つ。
3 学生が充実した大学生活を送れるようなさまざまな配慮を大学がする。教職員の親身な指導、少人数教育、図書館や食堂の充実、サークル活動の場の提供、各種イベント行事を通して、さまざまな人間関係、活動への参加を通して、大学生活に充実感を感じ、主体的な行動や能力を育成する。このような活動を通して、大学への愛着が高まる。
4 特色のある大学のカラーを打ち出す。それは、その大学の、建学の精神、伝統、卒業生の特質、教員の専門の強みなどから、その大学の魅力ある特色を出し、学生や世間にアピールする。
5 GPや科学研究費、各種機関の研究費など、外部資金を獲得し、大学の研究や活動を活性化する。資金的にも潤沢な研究や大学運営をする。
6 大学の名声を高める努力をいろいろする。教員が優れた著作、論文を発表する。学会で活躍する。マスコミに登場する。教員が政府関係、地域関係の審議会の委員を務める。講演をする。国や地域と連携したさまざまなイベントを企画する。学生のクラブが、全国や地区の大会や試合で活躍し、大学の名声を高めるのを支援する。
7 卒業生との連携を密にし、卒業生より寄付を集め、大学の施設設備、奨学金の充実を図る。
8 教員、職員、学生、卒業生が、大学をひとつのコミュニティーと考え、それへの愛着と一体感を持ち、それをよりよくしていくことが自分の喜び(や利益)にもなるという意識を持ち、行動する。

老年学

今日(17日)は、敬老の日。「卓球愛好会」で、ご一緒しているMさんより、老年学に関する情報をいただいた。参考になることがたくさん書かれているので、ここで紹介したい。

老年学に学ぶ 
① 1944年米国老年学会が設立された。(学会誌 Journal of Gerontologyその他Educational Gerontology)。日本では1959年日本老年学会が従来の日本老年医学会と日本老年社会科学学会の連合体として誕生した。(学会誌 日本老年社会科学会誌)。
高齢化社会の進展につれ高齢者の肉体的並びに精神的な諸問題の解決のためいろいろな研究が為されてきた。
②山本思外里氏は『老年学に学ぶ』(角川学芸出版、平成20年)並びに『より良く老いるための技術』(社会保険出版社、平成24年)の著書を書き、高齢者の生き方について大変有益な示唆を与えた。その内容をご紹介したい。
先ず著者は老年学の目的は老人が肉体的にも精神的にも健康であり、生命力と活動力を出来る限り長い間保てるように研究し実現するにあるとしている。     
 貝原益軒は言う。「君子は学んで道を楽しみ、天命に安んじて貧を憂えない。楽しみを得ては書を読み、時節を感じ、風景になれ親しみ、月花をめで、詩歌を吟じ草花を愛でる。清福を楽しめ。これは例え貧でもその身が気楽で静かで心に憂いがなければ良い。読書の益に勝るものはない。」
更に林語堂は言う。「人生を楽しむ「閑適生活」を礼賛し、旅行、友人、自然並びに読書を薦めている。中国人の余暇の楽しみ麻雀、花に水、囲碁、小鳥を飼う、入浴、昼寝、書道、芝居見物、讀経、盆栽等」
著者山本氏は言う。創造力とやる気が大切―やってみることが大切、問題は根気。更に著者は以下の事を述べている。
趣味を選ぶ5原則 ;1趣味の数は少なくてはいけない。2自分が主体的に選ぶ,3現役の仕事から全く新しい事をやる、3 満足と楽しみが得られるようにする 4お金のかからないものにする。
健康であるために;禁煙、お酒は適度に、運動する、適正体重にする、7-8時間の睡眠をとる、毎日朝食をとる、不要な間食をしない
ガン予防のために;植物性食品をとる、適正体重にする、運動、動物性脂肪を抑える。赤身の肉は一日80g以下とする、禁煙、酒は適度に、砂糖を避け、低塩にする
③ その他以下の本も参考になった。
古谷野亘編著「新社会老年学」(ワールドプランニング出版)
東清和著「エイジングの心理学」(早稲田大学出版)
麻生誠「生涯学習と自己実現」(放送大学教育振興会)