神野藤昭夫『紫草書屋文集』(2024.5)を読む

15年ほど前、放送大学の客員教授でご一緒した神野藤昭夫先生(跡見学園女子大学名誉教授)は、2年前に『よみがえる与謝野晶子の源氏物語』(花島社、2022)という大著(462頁)の専門書を出版され、このブログでも紹介したことがある(2022年7月14日)。その本の書評が国文学関係の学会誌に多く掲載されたばかりではなく、一般の新聞の書評欄でも大変高い評価が続いた.

その神野藤先生が、『紫草書屋文集―往きて往かざる日々』(花鳥社2024.5)という分厚い(553頁)自分史に近い本を出版され、贈って下さった。先生に書いたお礼状の一部を転載させていただく。

<「紫草書屋文集」という素敵なご本をお贈りいただき、ありがとうございます。 とても感激して、一気に読むのがもったいなく、少しずつ味わいながら読ませていただいています。学術的な部分(原稿)は除き近辺の私的な日常を綴った原稿や通信を再録したということですが、先生の学問的な見識や素養が随所にこぼれ落ち、味わいの深い文章で綴られています。同時に先生のこれまでの日常が赤裸々に(?)に語られ、その物語(「私小説」)を読むような楽しみがあります。同じ大学教員としてほぼ同時代を過ごしてきた私としては、体験を共有する部分があると同時に、先生のようにはできなかったと思う部分も多々あり、敬服の念を抱かざる得ません。先生の跡見女子大学でのゼミ生への指導(特に心温まる通信や卒論指導)に関しては、大学教育はこのようにあるべきと感じます。先生の学問への情熱、その努力、ご活躍に関しては、学ぶ点が多くあります。通勤途中や喫茶店での読書、深夜に及ぶ調べ物や執筆、博士論文の執筆と刊行、多くの講演、NHKの番組への出演、北京日本学研究センターでの中国の学生院生への指導など感心することばかりです。先生の蔵書愛にも大変共感しました。先生の本屋や古本屋巡り、住宅の地下の書斎を作り、本の背表紙を見ての当時の回顧など、研究者の模範になります。先生の著作には推理小説のようなスリリング感がありますが、その理由が今回の先生のご著書でよくわかりました。私達の教育社会学の論文でもこのように、読者に読ませるものが書けないものか思いました。その他、まだ感銘を受けた点が多々ありますが、今回はひとまず、御礼と簡単な感想にだけにさせていただきます。御礼まで>

 神野藤先生が早稲田大学に出した博士論文「散逸した物語世界と物語史」の概要が、下記で読める。(file:///C:/Users/takeuchi/Downloads/Gaiyo-2843.pdf)この博士論文は、『散逸した物語世界と物語史』(若草書房,1998)として刊行され、第21回角川源義賞を受賞している(添付参照)。その他、google scholar( https://scholar.google.co.jp/schhp?hl=ja)で、「神野藤昭夫」と入れて検索すると、先生の書かれた多くの論文や講演内容を読むことができる。これらを読むと、素人にも国文学の世界が奥深いものであることがわかり感銘を受ける。