韓国ドラマ「愛の不時着」を観る

韓国ドラマ「愛の不時着」全16話をネットフリクスで観た。話題のドラマだけあって、よくできたドラマだと思う。ブームを引き起こしたことが納得できる。ジエンダーの視点からも現代にマッチしているようだ。その分、旧いジェンダー意識に囚われている人にはそのよさがわからず、ジェンダー意識の「踏み絵」にもなるドラマのようだ。 ネットで書かれていることを少し書き写しておこう。

「韓流ドラマ今まで見た事なかったけど、初めて愛の不時着を見てはまった。こんなに面白いとは。日本のドラマみたいに視聴者がイライラするシーンがなく、基本的にこうなってほしいと思う方向に物事が動いてくれる。見ていて気持ちいいドラマ」「本当に『人を愛する』とはどういう事かをこれでもかと見せつけられたドラマでした。両国の関係を考えると限りなく切なく、でも離れてもそばにいるという二人の愛は限りなく温かい。ただ、リ・ジョンヒョクの様な完璧な男性は絶対に居ない! だからこれはファンタジーで、だから何度でも観てしまう。セリとリ・ジョンヒョクに逢うために…」

「最近の韓流ドラマのヒロインは、ひと昔前の可憐で受け身タイプの女性から、男性に頼らず自分の将来を自分の力で切り拓いていく、元気で活発なタイプへと変わってきている。『愛の不時着』のセリも、財閥の令嬢でありながら、自らファッションブランドを立ち上げて成功させたビジネスウーマンであり、愛する男のために命まで投げ出すほど愛に積極的な女性だ」 「ヒロインは美しいだけでなく経済的に自立しており、ヒーローを守る強さを持っている。2人の主演俳優が見せる素晴らしい演技力に加え、ジェンダー・ステレオタイプを覆すキャラクターの魅力が、古典的な「愛」をモチーフにしたドラマを格段に面白くしている」 「完璧に対等な男女の、壮大な恋愛ファンタジー」

「日本でよく見聞きする『弱い女を守ってやる俺』的な、単なるイキりやマッチョな誇示とは別物です。ジョンヒョクがセリに麺を打ったりコーヒーを豆から煎ったりするのも、銃撃戦で体を張るのも「守る」の一環。」 「このドラマで描かれているのは、強い男が愛する女を守り抜くという、伝統的な性別役割分担に基づく恋愛だけではない。リ・ジョンヒョクは、これまで女性たちが愛という名の下に、家族のためにしてきた「無償ケア労働」を、セリのために黙々とこなす。

「さらに重要なのは、これがラブ「コメディ」であることだ。視聴者は何度も泣かされるが、暗い気分は長引かない。泣けるシーンの次に絶妙な「笑い」を入れてくる」「良質なコンテンツはイデオロギーを超える力を持っている。」 「いかに気持ちを伝え、確かめ合い、未来を描けるようになるかという心の動き」「ひと昔前の韓流ドラマのように家柄や親は障害ではなく、絶対的な一線、つまり38度線だけが2人の愛を阻む。ソン・イェジンとヒョンビンと言うキャリアや人気が互角のスターを揃えたキャスティングも含め、『対等さ』を意識したドラマ」「「悪役であるセリの義姉たちも、坊っちゃん育ちの夫をコントロールして生きる力が強くて憎めない。北のオンニたちはそれぞれの個性が際立っているし、とにかく女性がものを言う。ミソジニー(女性に対する嫌悪や蔑視)が一切ないのがこのドラマの素晴らしいところ」。

「「推し」の視点を大事にしているドラマ-。(それは)好きな相手が幸せだったらそれでいいという、究極の尊い気持ち」「日本が朝鮮半島にしたこと、戦争の加害を思うといたたまれず、「早く統一されればいいですね」といった気楽な感想を口にすることはできない」 「ユン・セリ役を演じたソン・イェジンはまさに神の一手だった。女性視聴者の共感を得られる抜群の演技力と、男性視聴者をテレビの前に釘付けにできる美貌を兼ね備えた女優」  「「愛の不時着」は悲劇の「ロミオとジュリエット」になるはずの2人が、愛と知力と財力でサバイブして「織姫と彦星」となる物語」。 https://news.yahoo.co.jp/articles

追記 このドラマは今人気でネットフリックスでも日本の視聴の1位になっている。7月31日の朝日新聞朝刊に「『愛の不時着』にハマって」という見出しで、内田樹氏ら3氏のコメントが載っているが、その主な理由がこの3氏が書いているような北朝鮮の人々の様子がリアルに描かれているからというのとは違うと思う。やはり人気は主役の二人の関係(純愛とその成就に向けての行動)にあるのではないか。編集部の意図と3氏のコメントのズレを感じる。