教育社会学会参加記(その2)ー社会関係資本を獲得する場としての学校

古賀正義氏(中央大学)の発表『偏位する「社会的孤立」-内閣府若者WEB調査の分析から』を興味深く聞かせてもらった。
「ある場で関係から資源を獲得したいとする者は、担い手の供給する財(例えば、情報や技能など)を道具的に直接獲得するだけでなく、表出的な関係の維持によって、承認をえたり感情を交わしたりをしてそれを支えもする。この二重の過程こそ、資本の形成・獲得に多くの影響を与える。」
『ネットワークの場(例えば、サークル活動)への若者の参加が単純に社会関係資本の供給を促すというのではない。その場での同じ問題を抱えたもの同士の「同類的な関係」と指導者や相談者・ボランティアといった「異質な関係」との、相補的な関係性があって、社会関係資本をえることが可能になる.それゆえ、実際にはこの両者のバランスから、当事者に、場やその関係の選択が生じてくることになる』
「若者には、とりわけ家族(配偶者を含む)・学校を介した友人、地域の友だちの3種類の他者との接触が多くなっている」(配布発表レジメより転載)

古賀氏の発表は、社会関係資本やネットワーク論を使っての現代の若者の生活充実度や社会的孤立を防ぐ手立ての考察であり、いろいろ示唆される点が多い。

私が一番興味をもったのは、現代の若者が持続的な関係をもつものが「家族」に次いで、「学校を介しての友人」ということである。
学校という知識や技能の伝達・教育を主たる目的としている場で、友人関係は副次的な産物と考えられる場で、副次的なものが大きな意味(社会関係資本)をもつこと。学校は教師という仲間とは異質な存在があるからこそ、仲間だけからでは得られないもの(社会関係資本)が獲得できるということのメカニズムである。
これは学校の機能とも、また学校の潜在的カリキュラムということもできるが、学校が社会関係資本を獲得する場として機能しているという、重要な指摘だと思った。

『「同類的な関係」と「異質な関係」との、相補的な関係性があって、社会関係資本をえることが可能になる』ということからは、抽象的にいうと「横糸だけではなく縦糸があることにより何でも強くなる」ということかと思った。
たとえば、友人関係(横糸)も学校や教師(縦糸)があることにより強固になるので、街で友人を探しても見つからないということかと思った。学校や大学へ友人を探しに行くのは意味があることかもしれない。

台風と落ち葉

台風の怖さは場所によって違うかもしれない。
「近年にない最大級の台風の到来」というニュースが流れ、それ以上の被害になるところもあれば、雨風もたいしたことないところもある。後者の場合は幸いであったと喜べばいいのだが、近頃の災害予告のニュースは大げさなのではないかと、ニュースへの不信感も芽生える。
今週のはじめの台風も、関東は多少の雨と風だけでたいしたことはなくほっとした。家の周りの落ち葉を集め、その風情を楽しむ。

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日本教育社会学会69回大会参加記(その1)

以前にも書いたが、人によって学会への参加の姿勢は違う。
①日頃の研究の成果の発表の場と考える人、②自分の専門分野の情報を集めようとする人、③最先端の分野を学ぼうとする人、④質問や議論を楽しむ人、⑤司会を頼まれたので参加する人、⑥かっての師弟関係で集まるため、⑦知り合いとの再会を楽しむため、⑧旅行のついでに参加する人、などいろいろである。
日本教育社会学会69回大会が開催された一橋大学は、なかなか風格のある素敵なたたずまいの大学、教室で、このようなところで教えたり学んだりできる教員や学生は幸せだと思った。
大会は2日とも大雨の中での開催であったが、多くの人が参加し、いい発表があり、活発な議論が交わされていたように思う。
私の世代より上の参加は少なかったが、若い人が密度の濃い発表と的確な質問をして、学会の未来に期待が持てた。
私が聞いた中では、大御所の有本章先生や馬居政幸氏の発表も広い高い見識にもとづく発表で教えられるところが多くあった。
課題研究Ⅲ<「子どもの自殺」をどう考えるか>は、言説研究や構築主義の立場からの高レベルの発表が元森絵里子氏や北沢毅らかあり、学ぶところが多かった。
今回はいつも見る先輩や同期に近い人の参加が少なく、少しさびしい思いをしたが、それでも藤田英典氏、久富善之氏、住田正樹氏という同期や,先輩の牧野暢男氏とも話ができ、いろいろな知り合いと再会でき、有意義な2日間であった。
その他、学んだことは、この後、記録に残しておきたいと思う.

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教育社会学会69回大会

秋は学会の季節でもある。
今日(10月21日)から2日間の日程で、日本教育社会学会69回大会が一橋大学で開催される。
私もこの2日間は、いろいろ勉強させてもらう。多くの友人、先輩、後輩、知り合いに会うのも楽しみ。

http://www.gakkai.ne.jp/jses/conference/

高等教育の無償化について

高等教育の無償化論は、選挙の為に出てきたような印象があり、まともに考える気もおこらない。
でも、いくつか、面白い論点もありそうだ。
今日(16日)の朝日新聞(朝刊)の矢野真和氏の意見を読んで、次の見方に感心した。

① (大学進学の)「18歳主義」と「親負担主義」は他国に見られない日本のあしき習慣。
② 大卒者は高卒者より生涯所得が約7千万円高い。大卒者が増えれば所得税の税収が膨らみ、公的に投入した額を十分上回る。 
③ 雇用が安定し生活のゆとりができれば、病気のリスクも減少し、国家の福祉予算や医療費を削減できる。
④ 「貧しい人々も納めている税金で豊かな層が進学する大学の教育を支えるのは不公平」との指摘がある。一部の優等生だけが大学に進学していた古い時代の批判だ。
⑤ 大学は18歳のためだけでなく、みんなのためにある。学費を無償に近づけ、働き方を変え、誰もがいつでも学べるようにすれば人生も社会も変わるはず。