風の便り47号、45号(修正版)

毎月送られてくる辻氏の浜町からの「風の便り」47号を、掲載する。この号はさまざまな昆虫(蝉、カマキリ、カメムシ、ダンゴムシ、テントウムシ、蜘蛛)の ぬけがら特集で、カラーの写真が綺麗。以前の45号の修正版も一緒に送られたきた。「内容に気になる部分があって夜も寝られなくなり、ついに変更を決行しました」と添えられていた手紙に記されていた。それだけ、いつも練られた内容になっている。

有本章先生より『学問生産性の本質-日米比較-』(東信堂、2022.5)をお送りいただく

有本章先生より、2か月ほど前に、最近のご著書『学問生産性の本質―日米比較―』(東信堂、2022.5)をお送りいただいた。読んでお礼状をと思いながら、740ページの大著で、中身が高等教育に関する学問的な濃い内容の為、なかなか読み終わらず、礼状を書けず、最近に至ってしまった。きちんとした礼状(感想)は後日にしたいという、お詫び状だけをメールでお送りした(本来であれば、お手紙で礼状を書くのが礼儀であろうが、筆不精の私はなかなかそのようなことができない)。

有本章先生は、1941年広島市生まれで、広島大学、同大学院博士課程を修了(教育学博士)後、大阪教育大学他、多くの大学の教授を歴任し、現在兵庫大学高等教育研究センター長・教授を勤めていらっしゃる。日本教育社会学会会長、日本高等教育学会会長も歴任し、海外の学会の活躍も数々あり、単独の著作、編著書も多数ある著名な大学教授である。私は日本教育社会学会でご一緒させていただき、兵庫大学で開催のシンポジウムにも呼んでいただいたことがある。その有本先生が、今回740ページもの大著を新たな書下ろしをされ出版され、その内容が高等教育全般に及んでいることにとても驚いた。80歳を過ぎ、その研究意欲、執筆能力に微塵の衰えもないということが、信じられない。

内容は、「学問生産性」あるいはアカデミック・プロフェッションという観点から、大学教育のあり方を、歴史的な観点や国際比較をふんだん含め理論的に考察し、しかも現実のアメリカや日本の大学、大学教授、学生の実態のデータや事例を詳細に紹介、検討していて、博学の先生ならではの考察が随所にある。高等教育の社会学的研究の模範、金字塔になる著作ということは間違いない。本書を読みながら、大学や大学教育のことがいろいろ整理できると思った。それを書き留める作業をこれからしようと思う。いつきちんとしたお礼状を書くことができるか、わからないが。

虚構と現実

「予言の自己成就」という社会心理学の用語がある。嘘であっても予言すると、それがものにその通りの現実が出現するというものである。たとえとして、銀行が潰れそうという現実がなくても、「銀行が潰れると」という嘘の噂により、人々はお金を引き出しに行き、現実に銀行が潰れてしまうがよくあげられる。他の例として、高名な心理学者が、学校の教師に「この子たちの能力は高い」とランダムに選んだ子どもたちの名前をあげると、教師がその子に期待し、実際その後その子たちの成績が上がってしまうという「ピグマリオン効果」もそれにあたる。さらに社会学の実証主義に対する「構築主義」の立場も、実際(現実)より人々の思い込みが社会を動かすという立場をとる。

上記の理論や例から、現実より人々の思い込み(虚構)が社会を動かすという示唆が引き出されることが多い。しかし、その悪用や行き過ぎには注意すべきであろう。現実より虚構が、世を動かすことはあるが、それがあくまでも付け足しであって、現実が一番大事ということを忘れてはいけない。そのことを内田樹の最近(9月1日)のブログを読んで思った(下記に一部転載)

<安倍政治を総括する/ この10年間で日本の国力は劇的に衰えた。経済力や学術的発信力だけではない。報道の自由度、ジェンダーギャップ指数、教育への公的支出の対GDP比ランキングなどは「先進度」の指標だが、そのほとんどで日本は先進国最下位が久しく定位置になっている。/ 安倍時代が残した最大の負の遺産は「国力が衰微しているという事実が隠蔽されている」ということだろう。/ 政策の適否を考量する基準は国民の「気分」ではなく、客観的的な「指標」であるべきなのだが、安倍政権下でこの常識は覆された。/ 安倍政権下で政権担当者たちは「成功すること」と「成功しているように見えること」は同じことだと本気で信じ始めていた。/ 東京五輪の強行に際しても、「感染症が効果的に抑制されているように見せる」ことが優先された。それを有権者が信じるなら、それ以上のことをする必要はないと思っていたのだ。>( http://blog.tatsuru.com/)

「六本木クラス」感想(その2)

韓国ドラマではないが、韓国ドラマ「「梨泰院クラス」」の日本版リメイクの「六本木クラス」(TBS木21時~)の感想を7月9日のブログに書いた。

今日(9月2日)のWEBに「六本木クラス」の感想を書いて人がいて、それを読んだ。私の感想もほぼ同じで、私の感受性が人とずれていなくて一般的なものであり、安堵と落胆を感じた。それを一部抜き出しておく。

<『六本木クラス』の視聴率が右肩上がり!序盤は韓国版のファンからは厳しい声上がるも、評価が急回復した/ しびれる表情対決、下剋上ストーリーの面白さ/ ともすると大げさな芝居になりがちなところを、ベテラン、若手俳優たちが競って次々と表情を変えていく「表情対決」にしびれます。/ 意外にもテンポのよさ、スピード感が際立つメリットのほうが前面に出ています。/ 竹内は、本来持つキラキラでさわやかなトレンド感、「竹内涼真感」を見事に消し去り、武骨で泥臭い「宮部新」を好演しています。/平手友梨奈の圧倒的な存在感./ 第8話では、物語の要となる葵と龍河の対峙シーンが大きな話題になりました。/ 確固たる日本オリジナル作品として新たな魅力を持った『六本木クラス』>(韓国エンタメライター・田名部知子)