本が貴重な時代があった

辻秀幸氏より「風の便り」34号(2021.10.15)を送っていただいた。以前に書いたようにこの便りは月2回発行され、手作りで知り合い数名に送られるものである。80歳を超えている辻氏の情熱と律義さ、その内容の多彩さ、ユーモア、文章の切れに感心する。

今回のテーマは、図書館への本の寄贈の話。かっての図書館は個人からの本の寄贈を快く引き受け、寄贈者の名前まで明記し感謝の気持ちを表したという。今では考えられない。本が貴重と考えられた時代があったのであろう。今は図書館で本の寄贈はほとんど受け付けてもらえない。本自体の価値が下がっている。

図書館で本を書架に並べるためには登録が必要であり、その登録の作業に1冊3000円くらいかかると昔聞いたことがある(昔はカードを作成、今は電子登録)。したがって安易に寄贈は受け入れられないし、価値のない本を図書室に置くわけにはいかないことはよくわかる。

個人的には、自分の周囲に本があると心が落ち着くのだが、そのような人は少なくなっているように思う。自分の周囲にはもの(本もその中に含まれる)はなるべく少なくして、スッキリした空間で生活するのが理想と考える人が増えている。本が傍らにあると心が落ち着くなどと感じるのは、大学教員や本好きの一部の変わり者だけかもしれない。今はネットでなんでも検索でき、読めて、本は必要ないと感じる人が多くなっている。辻氏の「風の便り」から、本が貴重な時代のあったことを思い出し、昔のよき時代を懐かしんだ。

追記 下記に、昔の食べ物のことが書かれた35号も掲載する。