大学授業料の後払いについて

大学の授業料は親が出すものなのか本人が出すものなのか、あるいは社会が負担するものなのか。日本では本人ではなく親が出すものという考え方が強いであろう。社会が負担するという考えの側面も多少ある(国公立大学や私学助成)。それが、段々社会と本人の負担という方向に動きつつあるようだ。
モデルはオーストラリアとのことだが、その方法のデメリットはないのであろうか。大学を出て働いても収入が低い場合は大学授業料を払わなくてもいいとなれば、高い収入を得ようとか、働こうという意欲がわかないのではないかと心配する。そこには何かそれを防ぐ仕掛けがある(=必要)ように思う。(朝日新聞2017年11月4日朝刊より転載)

<大学の授業料、「出世払い」の利点は 豪州で導入、制度設計者(チャップマン豪州国立大教授)に聞く
 大学の授業料を国が肩代わりし、卒業後に「出世払い」してもらう。政府は教育の負担軽減策として、そんな仕組みを検討している。モデルはオーストラリアの制度だ。どんなものなのか。設計した豪国立大のブルース・チャップマン教授に聞いた。
 豪州ではかつて大学の授業料は無償だったが、財源が少なく定員を抑えざるを得なかった。
 そこで受け入れる学生数を増やす代わりに、学費を所得に応じて後払いする仕組みを設計した。1989年に始めた「高等教育拠出金制度(HECS)」だ。
 卒業後、年収が約5万5千豪ドル(約480万円)を超えると、額に応じて収入の4~8%を返していく。下回ると返済の必要はない。無利子で、すべての学生が利用でき、回収率は約8割にのぼる。
 利点は多くある。進学前や在学時にお金がかからず、卒業後も返すのに苦しんだり返しきれなくなったりすることがない。保証人も要らない。徴税のシステムで納めるため、回収コストも極めて低い。豪州では、この方式で進学機会が広がり、学生数が倍以上伸びた。
 日本も「所得連動返還型奨学金」を始めたが、対象は無利子奨学金を受けている学生だけだ。返す額は前年の年収で決まり、急に失業すると返済が困難になる。収入がなくても月2千円を払わせられる。制度も複雑でわかりにくい。
 日本が豪州のような方式を新たに導入する場合、政府はまず、授業料を負担する財源を用意しなければならない。私学が高い授業料を設定しないよう、上限を決める必要もある。
 公金を投入するのだから、大学教育の質をきちんと管理することも欠かせない。
 国の財政負担を抑えながら、大学教育の裾野を広げることは各国共通の課題だ。豪州の方式はニュージーランドや英国、ハンガリー、オランダ、韓国など採用する国が急増。日本でも検討に値すると思う。(聞き手・氏岡真弓)>

<追記: ただ、奨学金問題はかなり複雑なよう。専門家の小林雅之氏(東大教授)の最近の説明がわかりやすい。>
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