私がこれまで唯一古本屋に買い取ってもらった本は、『今和次郎集』全9巻(ドメス出版、1955年)である。あまりに嵩張り、本箱に置けなくなったせいである。今は少し後悔している。
今和次郎は考現学の創始者で、そして彼一代限りで終わってしまった。考現学は考古学との対比で考えられた名称で、現在あるものを観察で明らかにしようとするものである。対象はモノでも人間でも何でもよい。ただ、方法は観察に徹し、アンケートを取ったり、インタビューしたり、試薬を使ったりしない。今和次郎は東京美術学校図案科卒で、観察したものをデッサンに残しているが、その由来(原因―結果)などは探求しようとはしない。
考現学はその後、「生活学会」や「現代風俗研究会」や「路上観察学会」や「ファッションの定点観測」など受け継がれていく。
私はこのブログを少し書くようなってから(そんなに永く続くとは思えないが)、歩いていても「何か絵になるもの」(=何か写真に撮れるもの)はないかと探すようなった。これって考現学(?)ではないのか。いや単なる路上観察かもしれない。
いずれにしろ、まだ書庫に残っている『考現学入門』(今和次郎、ちくま文庫、1987)を取り出し、少し読み返し、考えてみよう。
作家の言葉
「生きることは失うことと同義だ、日々を過ごしているだけで私たちは何かを失う。失わない人生はあり得ないのだ」 「失うことはマイナスでもプラスでもなく、何かを持っていたという証しだ」
上記は、作家・角田光代の言葉である(星野博美『のりたまと煙突』解説、文春文庫)。
作家は、本当に、的確な言葉を探し出すものだと感心する。
バラの季節
山つつじの開花
恥
社会学者の作田啓一の『恥の文化再考』(筑摩書房)という名著がある。R・ベネディクトの『菊と刀』の内容を、日本文化の内容を加味して再考したもので、太宰治の『斜陽』などの分析を取り入れ、文学的な香を感じる本である。恥に関するさらなる緻密な分析は、『価値の社会学』(岩波書店)でなされている。
私達が恥を感じるのは、「視線の食い違いによる』という指摘が心に残っている。自分は相手にとって「かけがえのない存在」(個別)だと思っていたのに、相手からは「多くの人のひとり」(普遍)としか思われていないということが分かった場合、その二人の視線が食い違い、恥ずかしさを感じるというものである。デートに誘って断られた時の恥ずかしさは、これで説明できる。
私がこの2年間ぐらいで、一番恥ずかしと思ったことは、(電動アシスト自転車で転んだことではなく)、「女性優先車両」に気が付かずに乗ったことである。たまたまその日は朝早く(7時半ぐらいだっただったと思う)、いつも乗る1両目の先頭車両に駆け込み、ドアのそばに立ち本を読んでいたら、どうも周囲の人の視線が厳しい(「千葉ってこんなに女性の目が冷めたかったか」とのんきに思っていた)。1駅(といっても快速電車なので10分)先で、女性優先車両であることに気が付き、あわてて降りた。
このときの恥ずかしさはしばらく消えず、恐怖心に変わり、今でも電車に乗るたびに、この車両は私の乗っていい車両なのかと、周囲をキョロキョロ見渡すことになる(それを決して挙動不審と思わないでほしい)。早くこのことを忘れ、気持ちよく電車に乗り、本を読みたい。
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