古本を捨てる

うちの近くでは、毎週木曜日が、段ボール、古新聞、古本などを捨てる日である。一昨日の木曜日に、家の近くのごみ置き場に、私が昔よく読んだ批評家の本が捨ててあり、驚いた。同じような本を読む人が、この近所にもいるのかという驚きと、このような本も今は捨てざるを得ないのかという哀しみである。

数冊束ねて捨ててあった本は、中野好夫、幸田文,岩野泡鳴の本などと一緒に、吉本隆明の著作集の1冊と、江藤淳の著作集の1冊である。吉本隆明と江藤淳は、イデオロギー的には左と右の人で、その両方を好きで読む人はそれほどいないと思うのだが、私と同じような趣向の人がいたとは驚きである。こんな千葉の田舎に、同じようなことを感じながら、生活していた人いる(いた)というのは、不思議な気がする。多分、同世代であろう。

追記1 詩論を扱った吉本隆明の著作集だったので、政治より文学好きの人の人なのかもしれない。それにしても、「人の捨てたものを拾わないまでも詮索するなんてはしたない」と反省もした。

追記2 吉本隆明や江藤淳はそんな一般受けする「批評家」(文芸評論家)ではないが、大学教員好みなのかもしれない。I氏が教えてくれたところによると、下記のように、二人の著作は競って、大学入試に出題されているという。

最近10年間の大学入試出題数対決でも両者肉薄。吉本隆明(13件) vs 江藤淳(9件)

2010 上智大学 (02-04) 吉本隆明「『死霊』の創作メモを読んで」/2014 早稲田大学 (国際教養) 吉本隆明「春の匂い」/2015 酪農学園大学 (02-05) 吉本隆明『夏目漱石を読む』/2011 南山大学 (02-11) 吉本隆明『詩の力』/2011 明治大学 (情コミ) 吉本隆明『詩の力』/2009 阪南大学 (02-10) 吉本隆明『真贋』/2017 清泉女子大学 (03-01) 吉本隆明『読書の方法』/2009 広島修道大学 (02-02) 吉本隆明『読書の方法』/2016 名古屋学芸大学 (02-07) 吉本隆明『日本語のゆくえ』/2016 法政大学 (02-07) 吉本隆明『日本的なものとはなにか』/2005 和歌山大学 (前期-教育・観光) 吉本隆明『父の像』/2005 東海大学 (02-12 文) 吉本隆明『柳田国男論・丸山真男論』/2015 福岡大学 (02-04) 吉本隆明の文章/2015 群馬医療福祉大学 (03-09)

江藤淳「アメリカと私」/2011 神戸学院大学 (02-07) 江藤淳「海老原喜之助の回顧展―短い滞日中の幸福な体験―」/2014 岐阜聖徳学園大学 (02-10) 江藤淳「近代散文の形成と挫折」/2009 京都女子大学 (01-29) 江藤淳「青年正岡常規」/2010 中京大学 (02-06) 江藤淳「歴史と伝統」/2014 京都府立大学 (前期-文・公共政策) 江藤淳『成熟と喪失』/2011 滋賀県立大学  江藤淳『批評家の気儘な散歩』/2008 立教大学 (02-14) 江藤淳『批評家の気儘な散歩』/2014 立命館大学 (02-03 全学部) 江藤淳の文章

お雛様を飾る

今の季節になると、毎年同じようなことを書いている。つまり「お雛様」のことである(2017年3月3日、2018年2月20日)。娘が1歳の時、買ったお雛様がまだ家にあり、毎年今の季節だけ外に出し飾る。お雛様も1年に1度くらいは明るい外の空気を吸いたいであろうし、感謝の意味を込めて、1年に一度飾ることにしている。男の子(孫)も「お母さんおめでとう」と言って、お祝いする

高校教員調査の雑誌での紹介

昨年出した報告書「高校教師の教育観とこれからの高校教育」(中央教育研究所、研究紀要NO。92)の内容を、教育雑誌『内外教育』(時事通信社)が、4ページに渡り,2回に分けて詳しく紹介してくれた。

 調査の報告書は、とかくデータの羅列が多く、よほど興味をもっている人でないと、読んでもらえない。このように、詳細な紹介はありがたい。主に、第2章(竺原執筆)と第10章(黒河内執筆)、および第8章(武内、浜島執筆)の部分が紹介されている(下記に添付しておく)。

千葉も雪


今年は関東はほとんど雪が降らない。少し降っても積もることがない。千葉では今年2度目の雪だと思うが、今回は少し積もりそう。雪が降ると、銀世界に、子どもたちははしゃぎ、犬も喜び走り回る。大人も、非日常の景色に少しうれしくなる。

今日(9日)は暇だし、久しぶりに東京に出て、午前中は中央教育研究所のシンポジウムを覗き、午後は有楽町に行き、韓国映画「バーニング」を見ようと計画を立てていた。 しかし朝起き庭を見たら、一面雪で真っ白で、どうしようか迷った。                 「雪道で転倒したり、帰りの電車が止まってしまったらどうするの?」と家人に言われ、千葉に閉じこもる土曜日となった。

古井由吉の文章について

大学入試の国語の問題などは、どのようにして選ばれるのであろうか。入試は情報が外に漏れないようにするのが重要課題なので、教員皆で相談するというよりは、出題者の教員の選択に任されることが多いのではないか。すると勢い、出題者の教員の好みで題材が選ばれることになる。

I氏からの情報によると、古井由吉の文章が大学入試で出題されることは多いという(下記)。これは驚きである。古井由吉の文章は独特で慣れないととても読みにくい。それに情景の描写と心理描写が入り交じり、何を言っているのか理解するのに苦労する。特異な人、マニュアックな人でないと好きになれない。それが入試によく出るということは、国文学者の古井ファンが国語の入試問題を作り、自分の好みの文章を選んでいるとしか思えない。古井由吉ファンとしては、それはうれしいことであるが、一般の受験者にその好みを押し付けるのはいいことなのかと、少し疑問に思う。                『杳子』の名文だが、わかりにくい冒頭部分を出題している大学もある(添付参照)

追記 古井由吉の文章も、初期以降は読みやすくなっているのかもしれない。「夜中の納豆」(「聖なるものを訪ねて」平成17年収録)などの文章は読みやすく味わいも深い。入試問題の設問もよい。

t

[手元のデータから最近10年ほどで以下のよう](I氏からの情報)

2016 九州大学 (前期-教育・法・経済) 古井由吉「「時」の沈黙」/2009 和光大学 (02-02) 古井由吉「「聖なるもの」の行方」/2018 京都大学 (前期-文系) 古井由吉「影」/2009 大東文化大学 (02-08) 古井由吉「楽天の日々」/2015 福島大学  古井由吉「机の四隅」/2009 和歌山大学 (前期-教育・観光) 古井由吉「西念は黙って寝たか」/2009 明治大学 (情コミ) 古井由吉「辻占」/2008 南山大学 (02-11) 古井由吉「表現ということ」/2007 関西学院大学 (02-06 文) 古井由吉「夜中の納豆」/2008 東邦大学 (02-06 理) 古井由吉「杳子」/2009 九州産業大学 (01-30) 古井由吉『ひととせの』/2018 西南学院大学 (02-06) 古井由吉『楽天の日々』/2008 関東学院大学 (03-06) 古井由吉『言葉の呪術』/2011 津田塾大学 (02-06 学芸) 古井由吉『始まりの言葉』/2009 早稲田大学 (社会科学) 古井由吉『始まりの言葉』/2016 立教大学 (02-11 文) 古井由吉『聖なるものを訪ねて』/2009 武蔵大学 (02-07) 古井由吉『聖なるものを訪ねて』/2010 明治学院大学 (02-09) 古井由吉『先導獣の話』/2015 山梨大学  古井由吉『大人と子供の文学』/2011 南山大学 (02-13) 古井由吉『島の日』/2015 日本大学 (02-15 文理) 古井由吉『半自叙伝』/2015 立命館大学 (02-07) 古井由吉『半自叙伝』/2007 熊本大学  古井由吉『野川』/2015 成城大学 (文芸) 古井由吉の文章 font:minor-lat

追記 

I氏からの情報によると、古井由吉の出題頻度は、作家、評論家、思想家の中で48位だという。上位25位をあげると下記の通り。(出典『入試評論文読解の頻出作家 100』 (明治書院、1997年)(私の読んだことのある人は3分の2程度か)

1. 大岡信2. 山崎正和3. 小林秀雄4. 加藤周一5. 外山滋比古6. 中村雄二郎7. 山本健吉8. 森本哲郎9. 和辻哲郎10. 中村光夫11. 磯田光一12. 伊藤整13. 鈴木孝夫14. 唐木順三15. 高橋和巳16. 吉川幸次郎17. 林達夫18. 柳田國男19. 高橋英夫20. 森有正21. 霜山徳爾22. 丸山真男23. 養老孟司24. 村上陽一郎25. 加藤秀俊 26. 多田道太郎27. 上田三四二28. 尼々崎彬29. 夏目漱石30. 山折哲夫