「教育原論」(第14回)(7月19日)の授業のメモ

今日は、前期の試験前最後の授業になりますので、半期のまとめと補足を行います。

まず、これまで皆さんが毎時間書いていただいたリアクションを全部まとめてお返しします。リアクションの評価は、ABCの3段階で付けてあります。私の方のメモでは、7段階の評価を付けていますが、皆さんには3段階で提示しました。いい方にとっていただければと思います。評価によって自信を失うのではなく、自信は強めていただきたいと思います。評価というものは、以前に「それは外部の基準で計られる学力ではなく個々の学習者がどこまで学んでいるかを自覚できて、次の目標に向けて努力することを促す「生成する知識」である。(内外教育2019・4・3)」と書きましたが、外部の基準による評価より学習者の学びの指針になるようなものなので、自分がどこまで学べたのかなという目安として受け取っていただきたいと思います。

授業のまとめは、項目だけ示せば、配布ブリント(下記)のようになります。内容は、テキスト、配布資料、リアクション、ノートをご参照ください。

2019年度1学期 教育原論 まとめ                                   1 教育とは、子どもの個性や可能性を引き出すことか、人類の文化遺産を教え込むことか 2 教育と社会(経済、政治等)は、どのような関係があるか。-教育の発展と経済の発展は、関係がある。3 幼児期の育てられ方のその後への影響は大きいが、育児様式は、国によって違いがある。(日本は過保護で甘えが許されるが、アメリカは自立をめざして厳しい 躾がなされる。)4 学校における「隠れたカリキュラム」とは何か。子どもは学校の何から影響を受けるか。5 「予言の自己成就」とは何か。(情熱や自尊感情はなぜ重要か?) 6 学校や学級では、どのようなルールがあり、どのようなマナーが求められているか。その機能(はたらき、効果)は何か。7 家庭と学校の違いは何か 8 学校で教えられる知識の特質は何か。知識が「生きる力」になるのは、どのような 時か。9 教育は、なぜ法律によって規制されているのか。10 「教育基本法」 とは何か。その内容の特徴は?11 学校は、官僚的な組織なのか。12 子どもが不登校になる理由は何か。13 学校でいじめが起きる原因は何か。どのような対策をとればいいのか。14 教育思想家とは、どのような人か。その主な内容は。15 発達課題とは何か。子ども期(学童期)の発達課題は何か、青年期の発達課題は何か。16 教師の仕事には、どのようなものがあるか。17 教師に求められる資質や心構えは何か。18 日本の教師は、なぜ多忙なのか。19 「チーム学校」とは何か 20 教師は、ジェンダー(男女平等)の観点から、どのような点に気をつけて、教育、指導をすべきか。(テキスト、1章、2章、3章、5章、7章、9章 参照。   それ以外は後期に扱う)

今日は、補足として3点申し上げます。配布資料(添付)をご覧ください。いずれも、私のブログに書いた内容なので、詳細はそちらを見ていただきたいと思います。(以下、アドリブで話す。)                                 1 教育とケアの違い   (引き出すと教え込む、実践と理論の違いに通じる)(7月4日)2 普遍性(客観性)にたどりつく方法(3つ) 地下を掘る―普遍性を探す (2019年7月16日 ) 3 社会階層(社会的格差)と教育 4 友達の大切さー「レンタルフレンド」から考える .

第37回学校社会学研究会の開催


毎年夏に開催され、40年近く続いている学校社会学研究会の案内をいただいた。

日時は、8月29日(木)、30日(金) (受付 29日 12時)

場所  滋賀大学 彦根キャンパス 校舎棟2階7番教室

連絡先 

滋賀大学高大接続・入試センター児玉英明氏(hideaki-kodama@biwako.shiga-u.ac.jp

プログラムは、下記

水沼文平さんのご冥福を祈ります

このブログに時々、寄稿してくれていた水沼文平さん(前中央教育研究所所長)が、先月はじめに亡くなられたという知らせを受けた(享年73歳)。突然のことに茫然として、言葉もない。水沼さんと親交の厚かった人も多いので、私以上の驚き・哀しみの思いの人も多いのであろう。

水沼さんは中央研究所の所長時代、私たちの「教育調査研究会」の会合や合宿にも毎回出てきて下さり、有益な意見を出してくださった。遠方での我々の学会発表も聞きに来てくださり、また研究メンバーの個人的なことも気遣ってくださった。

親分肌の筋の通った生き方をする人で、また読書家であり、いろいろなことを学ばせていただいた。

私のブログにも、時々格調高い文章や歴史散歩の写真などを寄せていただいた。最後は、201948日の「仙台の歴史探訪」。(その前は、330日)

退職後は故郷の仙台に帰り、水泳、自転車、英会話、同窓会幹事などで、元気に過ごしている様子で、頻繁にメールをいただいていた。最後にメールをいただいたのは、2か月前の428日で、研究会メンバーや私の家族への気遣い、仙台の様子などが温かく穏やかなトーンで書かれていた。その後、私からのメールに返事がないのでどうしたのか心配していた。突然の訃報に言葉もない。もう少し、いろいろお話ししたかった。

水沼さんのご冥福を心よりお祈りします。安らかにお眠りください。

地下を掘る―普遍性を探す

ものごとを見る見方には、鳥観図と虫観図の2つがある。鳥観図は、ヘリコプターに乗って森を見下ろすようなもので、虫観図は地上を這いずる回る虫の視点で木の葉1枚1枚を見るようなものである。どちらも同じものを見るにしろ、見えるものが違っている。でも目指すものは、普遍性である。

普遍性を探すという面では、もう一つの方法がある。それは、一つの場所から地下を深く掘るという方法である。どの場所であろうと深く掘っていくと、地下水に行き当たる。それが普遍性である。ケースを扱う研究やカウンセリングは、個別を扱いながら、多くの人に共通する普遍性(地下水)を探ろうとする。

そのような個別を深く掘り地下水を探すという方法は、吉本隆明がどこかで言っていたように思う。同じことを村上春樹が言っているとのことを内田樹のブログから知った。それ箇所を、転載しておく。(blog.tatsuru.com/2017/05/14_1806.html )

「生まれつき才能に恵まれた小説家は、何をしなくても(あるいは何をしても)自由自在に小説を書くことができる。泉から水がこんこんと湧き出すように、文章が自然に湧き出し、作品ができあがっていく。努力する必要なんてない。そういう人がたまにいる。しかし残念ながら僕はそういうタイプではない。自慢するわけではないが、まわりをどれだけ見わたしても、泉なんて見あたらない。鑿(のみ)を手にこつこつと岩盤を割り、穴を深くうがっていかないと、創作の水源にたどり着くことができない。小説を書くためには、体力を酷使し、時間と手間をかけなくてはならない。作品を書こうとするたびに、いちいち新たに深い穴をあけていかなくてはならない。しかしそのような生活を長い歳月にわたって続けているうちに、新たな水脈を探り当て、固い岩盤に穴をあけていくことが、技術的にも体力的にもけっこう効率よくできるようになっていく。」(『走ることについて語るときに僕の語ること』、文藝春秋、2007年、64-65頁)「「書くことによって、多数の地層からなる地面を掘り下げているんです。僕はいつでももっと深くまで行きたい。ある人たちは、それはあまりに個人的な試みだと言います。僕はそうは思いません。この深みに達することができれば、みんなと共通の基層に触れ、読者と交流することができるんですから。つながりが生まれるんです。もし十分遠くまで行かないとしたら、何も起こらないでしょう。」(「夢を見るために毎朝僕はめざめるのです」文藝春秋、2010年、155頁)

敬愛大学 「教育原論」13回 講義メモ(2019年7月11日)

今日は、いつもと違う形式で行いたいと思い、4人のグループを作ってもらいました。そこで、話しあってほしいことは、後で申し上げます。 その前に、2つほど。

皆さんの私の授業に対するアンケートの結果を読ませてもらいました。例年、私の授業評価の点は、他の敬愛の先生方に比べがあまり高くなくて(敬愛の先生が授業熱心でよすぎるのかもしれない)、いつも見る気が起こらないですが、改善点を修学支援室に出さなくてはならないので、読ませていただきました。それに対する感想を申し上げます。(ただ、千葉大学名教授の宇佐美先生は、無知な学生が高度な大学教育の内容を評価する授業評価は、まったく無意味と言っていますが―これはつぶやき、学生には遠回しに話す)。

今年は全体に、授業の内容に興味を持った人が多く、ほっとしています。(「授業に大いに満足」58%、「概ね満足」36%)。講義内容はかなり専門的なものなので(私が上智大学に勤めていた時2~4年生に話した内容より高度になっていると思います)、理解してくれる人がどの程度いるのか心配でしたが、毎回の皆さんのリアクションを読むと、私の話についてきてくれている人が多くいることがわかります。 「もっと自信をもって話して下さい」という励まし(お叱り?)ももらいました。私が自信なげに見えるかもしれませんが、そんなに謙虚なわけではありません。私たち大学教師は、原稿を書くとき、自分が一番この分野の専門家という意識で書いています。私が最近書いた短い原稿(「内外教育」掲載)に対して、「辛辣ですね」と先輩の先生から言われました。授業でも同じつもりです。

授業へのコメントな中で、いつも同じような形式で飽きるというものもありましたので、今日は、グループで、いつも話さない人と話してもらいようにしました。それで、私の方で、男女混合のグループを11作りました。皆さんは決まった仲良しグループができて、普段話す人が決まってきているのではないでしょうか。今日は普段あまり話したことがない人とも話してもらいたいと思いグループを作りました(「こんなことまで大学教師は気を遣うのか」という声が聞こえてきそう)。テーマは、ジェンダーのことなので、異性の意見を聞いてください。その結果をグループ1枚のリアクションにまとめ、後でその1部を黒板に書いて説明してもらいます。 

話し合いの材料になること少し説明します。配布資料(添付)を見てください。(以下、多賀太「男子をめぐる問題、上野千鶴子「セクシーギャルの大研究」、上智大学学生「ラブソングに見られる女性心理の変化について」、について説明する)

教育原論リアクション (7月12日) ジェンダーと教育(その2)

1 男と女のどちらが生きづらいか。生きやすいか。その理由。 2 コマーシャルで、男と女の役割や関係はどのように描かれているか? 3 今の歌では、男と女の役割や関係はどのように描かれているか?4 女性が男性と同じように、社会で活躍できる為に、どのようなことがなされればいいか。5 その他ジェンダーに関するテーマを自由に選んで議論する。