潮木守一先生のご冥福をお祈りします

知り合いの先生から、潮木守一先生(名古屋大学名誉教授)が2月26日に亡くなられということをお聞きし、いささかショックを受けている。ご冥福を心よりお祈りする。

私が大学で教育社会学の授業を受講したしたのは、大学2年の駒場での潮木先生の「教育社会学演習」が最初である(A.H.ハルゼーらの教育社会学の英文のリーディングスがテキストであった)。以降学会や研究会でお話をお聞きし、先生の多くの著作から多くを学んだ。2015年11月15日に、上智河口湖ハイムに、先生に来ていただき、少人数でお話を聞きしたのが、お会いした最後かもしれない(2015.11.16,20のブログにその記録を残した)。

私の授業や原稿でも潮木先生の『キャンパスの生態誌』(中公新書,昭和61年)の中の、大学の3類型の話はよく取り上げ紹介してきた。ブログにも、潮木先生のことやその著作に関して何度も書いている(2011.5.6, 2012.5.6, 2015.1029.他)。広島大学高等教育開発センターのサイトで、先生の講演の記録(生い立ちから、研究生活、若い研究者へ)が読むことができる

https://rihe.hiroshima-u.ac.jp/center-data/researchers-resume/ushiogi/)。

先生は在職期間の長かった名古屋大学で多くのお弟子さんを育てているが、それ以上に、教育社会学会やその著作を通して後進の研究者に影響を与え、日本の教育界を導いてきたと思う。

友人のM氏から下記のようなメールをいただいた。<本日、潮木先生の訃報に触れました。とても残念です。寂しいです。潮木先生の翻訳A.H. ハルゼー『イギリス社会学の勃興と凋落――科学と文学のはざまで』(世織書房、2011年)はイギリス研究者にとっては必読書でした。教育社会学会の世代交代にあってまた学会の大きな星が消えた想いです。潮木先生がお書きなった「転換点に立つ教育社会学ー日本からの視点ー」(教育社会学研究)は、いまの教育社会学研究の在りようを予言する文章です。>

有本章編著『学士課程教育の質保証に関する研究Ⅵ』(2023.3)を読む

有本章先生から、有本章編『学士課程教育の質保証に関する研究Ⅵ』(兵庫大学・兵庫大学短期大学部・高等教育センター、2023年3月)をお送りいただいた。長年の調査研究の集大成の報告書ということで、研究成果のぎっしり詰まった内容で教えられることがたくさんあった。高等教育の歴史や高等教育に関する理論と、主にA大学の実際の大学の現場の組織や、教員の意識や授業の実態、学生の意識や行動の実際を突き合わせて、問題点や実践課題を探り、大学経営や大学に適した教育や指導の方法を提起するという内容で、大学経営者や高等教育研究者にとって示唆的な内容で、後世に残る報告書だと感じた。

有本章教授は、広島大学の新堀通也先生の門下の研究者で、日本教育社会学や日本高等教育学会の会長も務め、世界の高等教育の歴史と理論に精通し、日本の高等教育政策にも関わり、その研究や提言は日本の高等教育の政策に多大な影響を与えてきた方である。私の学生文化研究にも理解を示して下さり、A大学のシンポにも呼んでいただいたことがある。

主に調査対象になったA大学とA短期大学で、教員と学生の意識や行動、数年間にわたる経年比較可能な実証的なデータを蒐集し、それの緻密な分析をしている。(学部生調査は、山崎博敏教授が6年間の経緯を丁寧に追っている)。その実証データからの問題点の指摘、提言は、高等教育研究や教育社会学の理論に裏打ちされていて、説得力がある。これからのA大学やA短大、さらに全国の類似の大学や短大の経営や教育のあり方に関する有本教授の提言には、高等教育研究者の第1人者としての強い情熱と使命観が感じられ、感銘を受ける。

この有本教授らのA大学とA短大を主な事例とした研究を読んで、私もこれまで専任や準専任として勤めてきた大学(武蔵大学、上智大学、敬愛大学)のことを、その大学の歴史、建学の精神、偏差値、学部、地域などの様々な要因も考察し、教員や学生の実態に即して、分析考察したくなった(実際は、私の年齢と研究意欲のなさのせいで無理だと思うが)。有本教授の書かれていることは納得でき教えられたことが多いが、私の感じでは少し違うなと感じることもあった。それについては整理して、いつか有本先生と議論してみたい。

全国大学生協「第58回学生生活実態調査」のデータを読む

全国大学生活協同組合連合会(大学生協)から、「第58回学生生活実態調査」の報告書(CAMPUS LIFE DATA 2022)を送っていただいた。感謝したい。これは、毎年全国の学生を対象に、大学生協が実施している調査で、今回の回答者は30大学9126名(回収率25%)で、全国の学生の動向を知ることができる。毎年実施されていることから、経年比較も可能である。(58回の調査は、2022年10月~11月に実査)

 全体のデータをサーと見た感じを書いておく。1 大学では、遠隔授業と対面授業の組み合わせで授業を行って入り大学が多く(全体の54.8%)、学生生活の中心は「勉強」という学生が一番多く(30.3%)、学生の1日の勉強時間は増加し(19年48.2分→22年62.2分)、大学生活充実度も上昇している(20年74.2%→21年78.6%→22年87.5%)。2 大学の部やサークル活動の参加率は低いままで(58.4%)、大学外の活動や個人的趣味に打ち込む学生が増えている。3 PC,スマホ、WEBに接する時間は多い(SNS利用時間3時間以上59.2%)。4 アルバイトの就労率は79.8%で、回復しているが、コロナ前には届いていない。5家庭からの仕送り額は減少し(下宿生、67650円)、経済的にはつつましい生活を送る学生は多い。 

この調査の内容を、紹介した朝日新聞記事(2023年2月13日)を一部転載しておく。

「制限多い」「勧誘する機会減」 大学生のサークル加入、鈍い回復、― 学生生活の充実度はコロナ禍前に近づいたが、サークル所属率は低迷―。全国大学生活協同組合連合会(全国大学生協連)が昨秋、全国の大学生を対象に実施した調査から、そんな傾向が出ていることがわかった。 調査には、サークルに入れずにいることを残念がる学生の声が寄せられている。多くの数字がコロナ禍前の2019年の状況に戻りつつあるなか、鈍さが目立つのが、サークルや部活動への所属率の回復だ。全学年平均で19年の所属率は68・1%だったが、20年に56・9%に急減。今回も58・4%と伸びていない。調査では、週平均の登校日数や対面授業の割合なども尋ねた。週の登校日数は、2・0日だった20年から、21年は2・8日に増え、22年は3・9日と、19年の水準(4・4日)に近づいている。

追記-大学生の最近の様子に関して、東京外国大学の岡田昭人教授の「私の視点」を一部転載しておく。

< 新型コロナの感染拡大は学校教育にも大きな変化をもたらした。急きょ、導入され、試行錯誤を繰り返したオンライン学習を考えてみたい。/ ゼミの学生たちとオンライン学習について話し合ってみた。学生は、好きな時間や場所で学べる、録画して分からない点を繰り返し視聴できる、などの利点を挙げた。教師には大教室よりも画面の方が学生の顔がよく見える、という利点もある。デメリットは、他者との交流がなく学習の動機が上がらないこと。/「隠れたカリキュラム」の観点からはどうか。学生たちは、カメラオンの強制、グループに分けての意見交換など「ホスト(教師)による場の支配が強く感じられる」という。他者との身体的距離が感じられず、「場の空気が読めない」という意見も出た。/ 新型コロナは5月から季節性インフルエンザ並みの5類となる。だが、すべてが「対面」に戻ることはないだろう。オンラインは予想外の効果があり、映画観賞や遠方のゲストの講義に適している。学生は朝早い授業のオンライン化を歓迎する。/ そこでコロナ禍でのオンライン学習の経験を総括する必要がある。まずは教師と学習者が、互いに気づかなかった問題点を洗い出し、何が学習者に影響を与えているかをつかむ。「隠れたカリキュラム」を意識した、学習者主体の新たな教育のあり方が開けてくる。それは高等教育のさらなる効率化や教育の機会均等の確保につながるだろう。>(朝日新聞2023年4月7日)

風の便り 54号

毎月1日に辻氏が発行する船橋の「浜町から風の便り54号」を掲載する。今回のテーマは「食べる」。昆虫の「食べる」様子が写真と共に記述されている。

辻氏の書いているように、人間の「食事場面は、見ようによっては壮絶で凄絶」である。映画「フラッシュダンス」のヒロインのデートでの壮絶な食事場面を思い出す。デートで何故皆食事を一緒にするのであろうか。それで壊れてしまう恋人関係も多くあるのではないか。

佐倉にチューリップを見に行く

桜の花も散り始め、その他の春の花の季節。それぞれの花が、昨年より早めに咲いているようである。昨年は4月9日に行った「佐倉ふるさと広場」(https://iwalkedblog.com/?p=45877に、今日(4月5日)、チューリップを見に出かけた(昨年より4日早い)。

チューリップの花は、既にピークを過ぎているものもあったが、昨年より植え付け面積は増えていて、色とりどりのチューリップを楽しむことができた。昨年同様、自分で選んで40本のチューリップを土(球根)から堀り(20本、500円)、近所にも配り、家の庭に植えた(8996)。