敬愛大学教育こども学科の1年生に薦める本

私の授業を遠隔で受講している新入生に、学生生活の送る上で参考になる本をいくつか推薦した。今の大学生はあまり本を読むことはないと思うが、コロナで自宅に籠ることの多い今の時期こそ、読書のチャンスと思う。読書は能動的な行為であり、流れてくる情報を受け身で受けとめるテレビ視聴などとは違う、達成感がある。 

1 柴田翔『されどわれらが日々』(1964年、文春文庫)         

半世紀以上前になりますが、私たちが大学生になった時の必読書でした。恋愛や学生運動がテーマで,未知の世界のことで、ドキドキして読んだ覚えがあります。今は古すぎるかもしれませんが、かえって新鮮かもしれません。この作品は芥川賞を受賞してものです。その後それぞれの時代を象徴する青春小説が、芥川賞を受賞しています。庄司薫『赤ずきんちゃん気を付けて』(1969年)、三田誠広『僕って何』(1977年)、田中康夫「なんとなくクリスタル」(1980年)と続きます。

2 夏目漱石 『三四郎』 
  これはもっと古い明治の時代の話ですが、地方から東京に上京してきて大学生活を始めるウブな三四郎の大学での生活や失恋の話で、今読んでも感銘することも多いことでしょう。名作です。夏目漱石には、失意の時に読むと、心慰められる作品が多くあります。(三四郎は青空文庫で読める。 https://www.aozora.gr.jp/cards/000148/files/794_14946.html )

3 重松清 『きみの友だち』(新調文庫)
 これは敬愛の学生からすすめられて読んだ本で、読みやすく、その後私は重松清の本を何冊か読みました。小学生が主人公で、友人関係やいじめのことが、子どもの視点から書かれている小説で、教育学や心理学の本以上に、子どもの心理がわかると思いました。

4  村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(文藝春秋)
 高校時代の5人の友人グループ(男3人、女2人)の高校生活とその後を描いたもので、主人公のつくる君がなぜ他の4人から排除されたのかの謎解きのミステリーの話で、一気の読める本です。村上春樹については、人により好き嫌いがあると思いますが、今日本で一番有名な作家なので、1冊は読んおきたいものです。初期の短編も読みやすくミステリアスですし,エッセイはおしゃれで心温まります。。

5 カズオ・イシグロ 『わたくしを離さないで』(ハヤカワ文庫)
 ノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロの代表作です。舞台は イギリスの全寮制の学校生活とその後ですが、人とは何かを深く考えさせられます。少し哀しい話ですが、心に残る小説です。

その他にお薦めしたい本はたくさんありますが、皆さんに一気にお薦めしても、困惑されるだけだと思いますので、今回はこれで止めますが、1冊でも読んでいただけると嬉しいです。(学校や大学生活に関する本ばかりになりましたが)