中研ニュース

公益財団法人・中央教育研究所は、調査研究、教育シンポジウム、研究奨励賞の表彰、東北支援他、さまざまな活動をしている。(http://www.chu-ken.jp/)
その研究所の最近のニュースの一部を、許可を得て掲載する。

陸前高田市で「命の授業」
1月29(木)、30日(金)と水野丈夫先生の「命の授業」で岩手県陸前髙田市を訪問しました。一関駅から車で気仙沼街道を東に向かい、気仙沼市役所周辺の被災地を見ながら北上、陸前髙田に入りました。
2年前に谷川彰英先生と訪問した時は瓦礫の山でしたが、現在は山の土を長大なベルトコンベヤーで運び宅地用に土地のかさ上げをしていました。目勘定で7~8メートルといった高さで、最終的には20メートルにするそうです。
翌日の午前中は竹駒(たけこま)小学校、午後は矢作(やはぎ)小学校で「命の授業」を行いました。雪が降り始め、校庭いっぱいに建てられた仮設住宅の低い屋根に降り注いでいました。校庭の仮設は市内のどの小学校にもありました。止むを得ない措置なのでしょうが、子ども達は遊びまわる空間と野外体育の機会を失っています。さらに耐用年限2年の仮設に住み続けている人々の苦境は察するに余り有るものがあります。
前日矢作小学校で電子機器の点検を終えて帰る時、学校の坂を上ってくる少年を目にしました。翌日校長先生にお聞きしたら、彼は5キロほど離れた漁港の長部で被災し、矢作小学校の仮設に移住、そのまま長部小学校に通学しているそうです。目の前に学校があるのに生まれ育ったコミュニティと学校に対する愛着に強い共感を覚えました。
土地の嵩上げ、校庭の仮設、人口の流出に伴う児童生徒の減少、様々な問題を抱えている被災地ですが、水野丈夫先生の90分間にわたるの「命の授業」に真剣に聞き入る子ども達の姿を見て、将来を担う子どもたちの教育こそ最重点課題であることを再認識しました。
矢作小学校では授業終了後子ども達から竹内まりあの「いのちの歌」を合唱で聞かせてもらいました。
(「中研ニュース】27年2月5日発行 、所長 水沼 文平)

2014年度後期   教職概論 試験問題

 日時 2015年1月27日(火曜日) 9時20分~10時20分
 持ち込み可(本、プリント、ノート類) 電子辞書、ケータイ・スマホ不可

次の問題Ⅰと問題Ⅱの両方に答えなさい。(解答の順序は自由)

問題Ⅰ
 今、教師にはどのような資質や能力や技術が求められていますか? 中教審答申や各都道府県教育委員会などの考えを中心に説明しなさい。それらは、どのようにしたら養成されますか。

問題Ⅱ
 次の中から2つ選んで、答えなさい。
①  多文化教育のすすめ方
②  文芸(小説、映画、テレビ、マンガ等)に描かれた教師像
③  教師のモラルとマナー
④  21世紀型能力 (コンピテンシー)
⑤  学校組織の特質
⑥  モンスター・ペアレントへの対処の仕方
⑦  教師はなぜ大変なのか?

第30回東書教育賞 講評  

昨日(25日)第30回東書教育賞の表彰式があり、審査員の一人として参加し、下記のような講評を述べた。
   
 審査に関わらせていただきました。簡単に感想と、受賞の方々にお祝いを申し上げたいと思います。
 231件と多くの応募があった中から、厳正な審査の中から選ばれた皆さんの論文は、大変優れたものです。そして、感じますことは、それらには共通した点があるということです。
 第1に、教育の現場というのは、大変複雑ないろいろな要素が混在しているわけですが、その中から今問題になっている点、大切な点を的確に抽出し、何をどのようにすればいいのかということをはっきり示しているもの、そして、いい文章で、明快に書かれたものが選ばれています。
 今の時代の教育に大切なことの一つに、逆境にめげない強い心やお互いをいたわる絆であることが、阿部一彦先生の「女川町のふるさと創造」、佐久間充先生の「山田町の『学校の宝』を活用した復興教育の推進」などから、わかります。
 第2に、選ばれた論稿は、その取組、教育実践がとても優れたもので、実践者の高い教育力と教育技術の卓越性がうかがえます。それは、今の教育現場や子どもの現状にしっかり根ざしたもので、理想だけでなく現実的なものです。その教育技術や方法が、他の学校やクラスの模範となることでしょう。
 第3に、2とも関連しますが、仮説の検証が、きちんとしたデータによって裏づけられているものが選ばれています。たとえば、小学校の牧逸馬先生の「理科の授業づくり」ですが、さまざま工夫した理科の授業の後、児童の理科好き、実験や観察好きがが大きく上昇したことがデータで示されています。小学校の佐藤美和子先生の「いのちを大切にする子供を育てる保健体育」でも、授業後にいのちの大切さを実感する児童が大幅に増えていることがデータで示されています。
 ただ、影響を与えているものには隠れたものがあり、表にあらわれた要因は疑似相関という場合もありますのでご注意ください。どんな教育方法でも教員が熱心にやれば、それに子どもは感化され変容します。子どもが変わったのは、教育方法のせいなのか、教員の熱心さのせいなのかの見きわめが大事です。
 以上の3点以外にも、まだ優れた点は、他の先生方がご指摘の点のようにあると思いますが、この選ばれた論文が公表され、日本全国の教育実践の模範となることにより、日本の教育の向上が確実に図られると思います。
 このような論文を投稿された先生方に感謝するとともに、お祝いを申し上げます。