第30回東書教育賞 講評  

昨日(25日)第30回東書教育賞の表彰式があり、審査員の一人として参加し、下記のような講評を述べた。
   
 審査に関わらせていただきました。簡単に感想と、受賞の方々にお祝いを申し上げたいと思います。
 231件と多くの応募があった中から、厳正な審査の中から選ばれた皆さんの論文は、大変優れたものです。そして、感じますことは、それらには共通した点があるということです。
 第1に、教育の現場というのは、大変複雑ないろいろな要素が混在しているわけですが、その中から今問題になっている点、大切な点を的確に抽出し、何をどのようにすればいいのかということをはっきり示しているもの、そして、いい文章で、明快に書かれたものが選ばれています。
 今の時代の教育に大切なことの一つに、逆境にめげない強い心やお互いをいたわる絆であることが、阿部一彦先生の「女川町のふるさと創造」、佐久間充先生の「山田町の『学校の宝』を活用した復興教育の推進」などから、わかります。
 第2に、選ばれた論稿は、その取組、教育実践がとても優れたもので、実践者の高い教育力と教育技術の卓越性がうかがえます。それは、今の教育現場や子どもの現状にしっかり根ざしたもので、理想だけでなく現実的なものです。その教育技術や方法が、他の学校やクラスの模範となることでしょう。
 第3に、2とも関連しますが、仮説の検証が、きちんとしたデータによって裏づけられているものが選ばれています。たとえば、小学校の牧逸馬先生の「理科の授業づくり」ですが、さまざま工夫した理科の授業の後、児童の理科好き、実験や観察好きがが大きく上昇したことがデータで示されています。小学校の佐藤美和子先生の「いのちを大切にする子供を育てる保健体育」でも、授業後にいのちの大切さを実感する児童が大幅に増えていることがデータで示されています。
 ただ、影響を与えているものには隠れたものがあり、表にあらわれた要因は疑似相関という場合もありますのでご注意ください。どんな教育方法でも教員が熱心にやれば、それに子どもは感化され変容します。子どもが変わったのは、教育方法のせいなのか、教員の熱心さのせいなのかの見きわめが大事です。
 以上の3点以外にも、まだ優れた点は、他の先生方がご指摘の点のようにあると思いますが、この選ばれた論文が公表され、日本全国の教育実践の模範となることにより、日本の教育の向上が確実に図られると思います。
 このような論文を投稿された先生方に感謝するとともに、お祝いを申し上げます。