社会的貢献について

どのような職業に就くにせよ、その職業に就くのは、生計を立てたいということ同時に、社会に貢献したい(人の為に役立ちたい、社会をよくしたい)という気持ちがあるのであろう。ただ、その社会への貢献の仕方は職業や役職によって違う。

教育の分野でいえば、現場の教師として児童・生徒に接し、その子らの成長に貢献したいという人もいれば、校長になったり教育委員会に勤め、教育の条件整備をしたり教師を指導したりして(日本の学校)教育の質をあげたいと考える人もいるであろう。

大学教師の場合も、自分の研究に打ち込む人、学生の教育に情熱を注ぐ人、大学経営に生きがいを見いだす人、社会的に活躍する人など、いろいろである。私の知り合いでは、研究の分野では優れて有名な人は多くいるが、大学の学長になったり、社会的に有名になり、時の教育政策や世論に影響を与えている人はあまり見あたらない。それは、「教育社会学」というどちらかというと世の主流に対しては懐疑的、批判的なスタンスを取りがちな学問の性格から来ているのかもしれない。ただ、教育社会学はデータを扱い、データや実際の事務の処理には得意なので、大学の実務を担当する副学長に就く人は少なからずいる。しかし学長になる人は少ない。

若い頃から知り合いで友人の明石要一氏(千葉大名誉教授・千葉敬愛短期大学学長)が第10期の中央教育審議会の生涯教育分科会の分科会長になったという新聞記事を読んだ。頑張ってほしい。

研究者冥利に尽きる(その2)

2017年2月19日のブログで紹介した山本雄二氏の著書『ブルーマーの謎〈女子の身体〉と戦後日本』 青弓社)は学術的な労作である。そのような優れた研究書は、後年になっても参照されることがある。研究者冥利に尽きる。今日(4月23日)の新聞記事の該当箇所を転載しておく。

<ブルマーの歴史に詳しい関西大学の山本雄二教授(教育社会学)は、「(反対の声が大きくなった)発端は日本人学校だったが、当時広がっていったセクハラの概念とつながり、学校によるブルマーの強制が『組織的なセクハラ』とみなされる可能性が高まり、生徒の声を無視できなくなった」と読み解く。 山本教授によると、そもそもブルマーは、1900年代前半、女子体育の普及に努めた井口阿くりが広めた。着物とはかま姿だった女子生徒が、ブルマーのおかげで体を動かしやすくなったとされる。1964年の東京五輪がきっかけで女性の肉体美が肯定されるようになると、当時の全国中学校体育連盟の支援を受けた学生服メーカーが体に密着したブルマーを推進し、全国に広めたという。 ブルマーの生産シェア1位だった大手学生服メーカー菅公学生服(岡山市)では、70年代後半~90年代後半、体操着として使うブルマーを製造。ハーフパンツの需要増加とともにブルマーの需要が減り、2013年に出荷を終えたという。>(「消えたブルマー 中3女子の「はきたくない」に裁判官は」朝日新聞4月23日朝刊 )

そろそろバラの季節

4月も中旬を過ぎ、日中は暖かい日が続き、そろそろバラの季節。うちの庭のモッコウバラはまだ蕾だが、陽当たりのよい隣の向かいの家の垣根のモッコウバラはもう満開。これから、いろいろバラを見に行く楽しみがある(ツツジやサツキもいいけれど)。

ただ、これから5月にかけへは、5月病にかかる季節でもあるので、若い人は気を付けてほしい。4月に新しい環境に気張って適応して疲れが出てくるのであろう。その症状は脱力感で、何かをしようという意欲がなくなる感じだと思う。5月は新緑がきれいで、1年で一番さわやかな季節である。心身の健康を維持し、さわやかな季節を楽しみたい。

ホームスクーリングについて

20年以上前になるが、WISCONSINのMadisonに1年間滞在した時、ホームスクーリングという言葉を初めて聞き、子どもを学校に行かせず親が子どもを家庭で教育する方法が、アメリカの各州で認められていることにとても驚いた。知り合いのHSの子どもの様子も見学した。それでホームスクーリングについて調べ、(日本の)学会でも発表し活字にもした。(上智大学教育学論集 30号 65-109頁 1995年度、IMG_20180716_0001)

それから、ホームスクーリングはどのようになったのか、きちんと調べることをしていないが、4月16日の朝日新聞朝刊に最近の様子が紹介されていた(『親が「先生」 米で増加のホームスクーリング、実態は』)それを読むと、20年前とあまり状況は変わっていないようにも思えた。ただ、少し新しいと思われるのは、下記の点である。

1 州によっては、学校関係者の家庭訪問を義務づけたりする場合もある。2 (ある)子供たちは、近くの「コンパス・ホームスクール」に通う。地域に住む現役教師や研究者らが週2回、5~18歳のHSの子供に様々な教科を教える。3 米家庭教育研究所によると、2017年時点でHSの子供は約200万人で、なお増加傾向にある。当初は白人が大半だったが、今は3分の1が黒人やヒスパニック系。ゲイサー教授は「以前はイデオロギー的な理由が主だったが、今は教育内容で選ばれている」という。大学など複数の調査で、「子供によりよい教育を受けさせたい」という家庭が半分以上を占める。4 親に教育経験がなくても、ネット経由で良質な教育を受けられるようになった。新たな需要に対応しようとオンライン教育の種類も増えている。5 HSが虐待の温床になっているとも言われる。「責任ある自宅教育連合」によると、00~12年、HSの家庭で虐待やネグレクトによって子供が死亡したのは84件。一般家庭よりもその死亡率は高いという。6(日本)では、「以前はメディアでHSについて話すと、ネットを中心に『教育放棄だ』と激しい批判を浴びた。最近はそれが減り、少しずつ受け入れられている感触がある」

上記は新聞記事で研究論文ではないので、どの程度正確な内容かわからない。アメリカの研究論文や教育雑誌を見て、現状を知る必要がある。日本では、今は学校の抑圧より家庭の児童虐待の方が問題になっているので、あまりHSへの関心は高まらないであろう。