とても感心した本の書き方

本の書き方はいろいろあると思うが、今回、北澤毅・立教大学名誉教授よりお送りいただいた最新刊『「教育問題」は作られる―構築主義的な読み方・解き方』(時事通信社,2025)には、とても感心した。

北澤氏のこれまでの研究の集大成の1つで、内容が素晴らしいという面が第1の理由であるが、同時に、自分の今までの研究の集大成を論文集として出版するのではなく、一般向けに読み易い言葉で書かれたことである。構成も1つの小説のように組み立ててストーリーを考えて、読者がミステリー小説を読むようなる仕組みになっている。同時に注や参考文献も、コンパクトに精選され、読者が構築主義について学術的に学ぶのにも便利になっている。

内容を一部紹介したい。本書は、社会学の「構築主義的な読み方・解き方」を、少年非行、いじめ、発達障害の問題のされ方を、構築主義の視点から論じている。少年非行に関する予言の自己成就やラベリングが、意図しない結果を生む過程やメカニズムがわかりやすく書かれている。発達障害に関しても斬新な鋭い視点が提起されている。児童の定型から外れていると早期に診断され、発達障害のラべリングされた児童が、一斉教育を重んじる日本の学校制度のもとで、個性を抑圧され、障害者にされていくメカニズムが鮮やかに描かれている。それを回避する学校や教育実践も紹介されている。