霧降高原のニッコウキスゲで心と命を養う

藤原新也は近著(『メメント・ブィータ』双葉社、2025)の中で、ウクライナ難民の女性が上野の桜の花を見て晴れた表情に変わったテレビ番組や、自分の花体験から「人は花を見て心を養っている。平たく言えば命を養っている」と書いている(306頁)私も含め、高齢者が季節季節の花を見たくなるのは、加齢で枯れてきた心を養い、先の短くなった命を養っているのかもしれないと思った。

昔夏に蓼科に行った時の、近くの車山高原のリフトに乗ってみたキスゲのさわやかな印象が強く心に残っている。そして昨年、川治温泉に泊まった帰りに寄った霧降高原のニッコウキスゲの見事さに心打たれて。今年もそのニッコウキスゲを見ようと出かけた。昨年と同じ時期(6月下旬)に、湯西川の温泉宿に宿泊して訪れたが、結果的に次期が早すぎ、しかも大雨の中、濃い霧も発生して、霧降高原の1500段の階段の登り降りに難儀し、1日目は300段くらいで諦めた。2日目も挑戦して、何とか雨の止んだ曇り空の中600段ほど登り、4分咲きのニッコウキスゲの花を楽しんだ。さすが霧降高原で、アッという間に霧が出て、あたり一面視界がなく、幻想的な世界に黄色のキスゲの花が浮かび上がる。少しは心と命も養えたのではないかと思える(温泉で体の休養も得た)。

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