大学での小集団(グループ)研究の記録

昔書いたものは忘れていることが多いが、たまたま目にふれ、読み返すことがある。最初に勤めた武蔵大学は、「ゼミの武蔵」と言われ、1年生から各学年にゼミがあり、私も毎年各学年1つずつ計4つのゼミを担当していた。2年生の「青年期の社会学」というゼミでは、小集団のグループ研究をやったことが2度ほどある。その試みは今から30年以上年前のことである。その記録を武蔵大学の人文学部紀要に残したものを読む機会が、今回あった。その小集団のグループ研究という方法は、経済学部の岩田龍子教授のゼミのやり方を真似たものである。

その記録を読んで思ったことは、岩田教授が発案・実践し、私も真似してやったグループ研究は今教育界で話題になっている「探求学習」(注1)の方法に近いとのではないかと感じた。自分で研究テーマを探して、資料やデータを集め、考察して、まとめて発表するという方法である。ただ、私のやった方法は、個人でやる研究ではなく、小集団(グループ)でやる方法で、高校生ではなく、大学生がやったものである(注2)。

同じような方法で、大学生のグループ学習を、最近静岡大学名誉教授の馬居政幸氏が、静岡県立大学の「総合的な学習・探求の時間の指導法」の時間の授業で行いその記録を残している(注3)。あらかじめどのような文献を学生に読ませるか。グループ研究の成果の発表はどうするかなどは、私と馬居氏の授業では違っているが、学生に探求のテーマを話し合いで決めさせる、自分達で資料を探し読み込み、共同で成果をまとめるという方法は共通している。この大学での方法が、中高の総合的な学習の時間や探求学習のヒントになるのかどうかどうかわからないが、記録に残しておきたい。

注1 「探究学習とは、生徒が自ら問いを立て、情報を収集・分析し、解決策を考える学習活動です。具体的には、日常生活や社会の問題を探求し、主体的に学ぶことが重視されます。小・中学校では「総合的な学習の時間」に、高校では「総合的な探究の時間」に導入されており、グローバル化やデジタル化が進む中で、複雑な問題に取り組む力が求められています。探究学習は、単なる知識の習得ではなく、生涯にわたって学び続ける力を育むことを目的としています。」( 朝日新聞デジタル、https://www.asahi.com/sdgs/article/15272436

注2 武内清「社会学演習における小グループ研究の試みとその成果」(武蔵大学人文会雑誌20巻4号、1989年3月)(下記に一部転載)

注3;馬居政幸 「総合的な学習・探求の時間」が挑む公教育再構築の課題と可能性」『現代の教育課題を読み解く』(中央教育研究所 研究報告no 103、2023,12 収録)