瀬戸内寂聴・藤原新也『若き日に薔薇を摘め』河出書房新社、2013年6月刊。
この書簡集の中味は、年寄り向けに書かれているわけではない。「若き日に摘み取った薔薇の蕾は人生の後半において、あるいは老いの中で花を咲かせるのだ」(p212)とあるように、二人の青春も振り返りつつ、含蓄のある話が満載である。
寂聴が「ほのかな色気が手紙には漂ってくる時もある」と書いているように、ドキドキするような手紙のやり取りだ。
この書簡の初出の「the寂聴」という素敵な雑誌が出ていたことも今回知り、何冊か手に入れた。
この中で、藤原新也は、歳を取ってからの健康法について、車のたとえで、「ときおり速度違反くらいのターボをかけること」をあげている。それは、「ほどほどの力を出しながら世の中を切りぬけていく」老いの術の対極にあるもので、ターボの後の休息を充分に取り、「踏む必要もないアクセルを踏まない」ことが必要と言う。心にとめておこう。