全国大学生協「第58回学生生活実態調査」のデータを読む

全国大学生活協同組合連合会(大学生協)から、「第58回学生生活実態調査」の報告書(CAMPUS LIFE DATA 2022)を送っていただいた。感謝したい。これは、毎年全国の学生を対象に、大学生協が実施している調査で、今回の回答者は30大学9126名(回収率25%)で、全国の学生の動向を知ることができる。毎年実施されていることから、経年比較も可能である。(58回の調査は、2022年10月~11月に実査)

 全体のデータをサーと見た感じを書いておく。1 大学では、遠隔授業と対面授業の組み合わせで授業を行って入り大学が多く(全体の54.8%)、学生生活の中心は「勉強」という学生が一番多く(30.3%)、学生の1日の勉強時間は増加し(19年48.2分→22年62.2分)、大学生活充実度も上昇している(20年74.2%→21年78.6%→22年87.5%)。2 大学の部やサークル活動の参加率は低いままで(58.4%)、大学外の活動や個人的趣味に打ち込む学生が増えている。3 PC,スマホ、WEBに接する時間は多い(SNS利用時間3時間以上59.2%)。4 アルバイトの就労率は79.8%で、回復しているが、コロナ前には届いていない。5家庭からの仕送り額は減少し(下宿生、67650円)、経済的にはつつましい生活を送る学生は多い。 

この調査の内容を、紹介した朝日新聞記事(2023年2月13日)を一部転載しておく。

「制限多い」「勧誘する機会減」 大学生のサークル加入、鈍い回復、― 学生生活の充実度はコロナ禍前に近づいたが、サークル所属率は低迷―。全国大学生活協同組合連合会(全国大学生協連)が昨秋、全国の大学生を対象に実施した調査から、そんな傾向が出ていることがわかった。 調査には、サークルに入れずにいることを残念がる学生の声が寄せられている。多くの数字がコロナ禍前の2019年の状況に戻りつつあるなか、鈍さが目立つのが、サークルや部活動への所属率の回復だ。全学年平均で19年の所属率は68・1%だったが、20年に56・9%に急減。今回も58・4%と伸びていない。調査では、週平均の登校日数や対面授業の割合なども尋ねた。週の登校日数は、2・0日だった20年から、21年は2・8日に増え、22年は3・9日と、19年の水準(4・4日)に近づいている。

追記-大学生の最近の様子に関して、東京外国大学の岡田昭人教授の「私の視点」を一部転載しておく。

< 新型コロナの感染拡大は学校教育にも大きな変化をもたらした。急きょ、導入され、試行錯誤を繰り返したオンライン学習を考えてみたい。/ ゼミの学生たちとオンライン学習について話し合ってみた。学生は、好きな時間や場所で学べる、録画して分からない点を繰り返し視聴できる、などの利点を挙げた。教師には大教室よりも画面の方が学生の顔がよく見える、という利点もある。デメリットは、他者との交流がなく学習の動機が上がらないこと。/「隠れたカリキュラム」の観点からはどうか。学生たちは、カメラオンの強制、グループに分けての意見交換など「ホスト(教師)による場の支配が強く感じられる」という。他者との身体的距離が感じられず、「場の空気が読めない」という意見も出た。/ 新型コロナは5月から季節性インフルエンザ並みの5類となる。だが、すべてが「対面」に戻ることはないだろう。オンラインは予想外の効果があり、映画観賞や遠方のゲストの講義に適している。学生は朝早い授業のオンライン化を歓迎する。/ そこでコロナ禍でのオンライン学習の経験を総括する必要がある。まずは教師と学習者が、互いに気づかなかった問題点を洗い出し、何が学習者に影響を与えているかをつかむ。「隠れたカリキュラム」を意識した、学習者主体の新たな教育のあり方が開けてくる。それは高等教育のさらなる効率化や教育の機会均等の確保につながるだろう。>(朝日新聞2023年4月7日)