アメリカについて 教育の無力さについて

戦後の多くの世代にとって、アメリカ(合衆国)は、その経済的豊かさのみならず、社会の仕組み(特に民主主義)や文化も教育もまた人間性や倫理も尊敬や憧れの対象であった。そして、戦後の日本国民にとってアメリカ社会は目指すべきモデルであり、アメリカに少しでも追いつこうと頑張ってきた。

教育の分野でも、戦前の教育勅語のような封建的な考えではなく、アメリカの教育使節団の指導に導かれ、民主主義の精神を学び、市民的倫理的な人間形成を目指した。アメリカは、世界に先駆けて高等教育(大学教育)が普及した国であり、高等教育進学率は群を抜いていた。教育は、特に大学教育は専門的知識を教えるだけでなく、何ごとも疑い、権力に騙されることなく、自由に思考する批判的精神を教える場である。高等教育進学率と人々の民主主義意識や倫理観は相関し、アメリカは常に世界のトップにいた。少なくてもそのように、世界の人々は思っていた。ただ、アメリカのベトナム戦争や日米安保条約などは、アメリカの強権発動で何かおかしとは感じる人は少なくなかったが、全体としては、アメリカは模範とすべき国で、多くの人が、アメリカを研究し、学び、アメリカに留学し、その仕組みや思想や文化を学んできた。

それが、この4年間、そして最近のアメリカの惨状はなんということなのであろうか。アメリカ国民の半分以上がトランプ支持、差別意識も強く、倫理感もあるとは思えない。アメリカの教育、特に大学教育がやってきたことは何だったんだろうと疑問に思う。もう誰もアメリカの学問も文化も教育も模範にしようと思えず、アメリカに留学しようという気もおこらないのではないかと思う。これまで、アメリカの知識人やジャーナリズムが、一部のエリート意見しか代弁せず、それに対してアメリカの中下層の白人の意見をトランプが代弁してきたということもわからないではない。それにしても、日本のマスコミが伝えるトランプそして共和党、その支持者の人たちの言動は、私たちが、これまでにアメリカ人に対していだいていたものと全く違う。アメリカにいる進歩的な知識人たちが、トランプ政権に、有効な抗議をしたというニュースも聞こえてこない。アメリカに対する失望感は大きい。そして高等教育の一番普及したアメリカという国で、トランプ支持者が国民の半数もいるということに驚く。教育はそんなに無力なのかと。

追記 上記は、少し極端に書いたもので、別の側面もたくさんあるであろう。

アメリカの建国の歴史から考えたら、ことはそんなに単純ではないのだろう。内田樹の最近の講演「市民社会とコモン」を読むと(http://blog.tatsuru.com/2021/01/19_1043.html)、「トランプは典型的なリバタリアンです。リバタリアンにとって最も大切なのは「自由」」です。公権力が介入してきて自分たちの考えや行動を規制することに徹底的に抵抗する。」というように、トランプ支持者が「自由」を求めていた側面もある。 

日本の知識人の中にも、トランプ支持の人は少なからずいる(添付参照)。

 私も過去のブログで、アメリカの教育や大学の素晴らしさに関して、wisconsin での1年間の体験から書いている(2018年7月16日参照)