欧米への憧れや幻想を捨てて

日本人にとって明治以来そして戦後も外国それも欧米へのあこがれは強かったように思う。政治の面でも学問や知識の面でもまた暮らしの面でも、日本に比べ欧米の方が圧倒的に近代化が進んでいて、見習うべき点がたくさんあった。欧米に渡航したり留学したりした人の持ちかえる見聞が本になり、それを読んで一層欧米へのあこがれが強くなった。

それがここに来て、状況が少し変わってきた。テロや犯罪が多い欧米に比べ、日本は安全で住みやすく伝統的に優れたものが多くあると、政府が日本賛美を推奨し、マスコミもそれに乗り、若い人の留学離れもすすんできた。欧米の生活や暮らしぶりを紹介をする文献も、これまでは欧米先進国がいかに素晴らしいかという内容が多かったが、そうではない報告も増えて来た。たとえば、今ネットでよく読まれている「イギリス毒舌日記」https://ameblo.jp/wiltomo/(イギリス人と結婚した日本人が、イギリスの田舎町の日常や人々のことを描いている)を読むと、イギリスの実際の生活や人となりがよくわかる。それを読むとイギリス社会やイギリス人に対するあこがれは薄れていく。

アメリカのトランプ大統領の発言ややり方に呆れるだけでなく、それを支持しているアメリカ人が多くいることに、アメリカ社会やアメリカ人への幻想は薄れていく。だからと言って、日本賛美に走ることは危ないが、欧米への憧れや幻想を薄め、国にとらわれず、何が正しいのかを見極めなければならない。 (このことは、広く外国に目をやり、自国の生活や文化を相対化をすることの大切さを否定するものではない)。