ひだまりの思い出  水沼文平

仙台は最高気温が15°最低気温が5°と大分寒くなってきました。エアコンで暖かく
なった部屋で本を読み音楽を聞いているととても幸せな気持ちになってきます。そし
て60年以上も前のこどもの頃の寒かった家の中を思い出したりします。

真冬の朝、目を覚ますと寒さで鼻のあたりが痛くなっていました。当時は暖房と言っ
ても居間に掘り炬燵か石油ストーブがあったくらいで子どもの部屋には何もありませ
んでした。日本の家屋は南方から伝来した稲作と一緒に北上したもので、木と土と紙
で構成された高床式の建物です。隙間だらけの家ですから風や雪さえも吹き込んでき
ました。外に出る時は「どんぶく」という綿入れ胴着を着て、姉たちのお下がりの
セーターを着ていた覚えもあります。そして下駄に足袋という足ごしらえでした。

ところで、寒かった小学生時代ですが暖かい場所もありました。それは林に囲まれた
空地の「ひだまり」です。空地の枯れ草は薬草のようなにおいがしました。そして、
そのひだまりは家庭や学校から解放された自由な空間でした。友だちと団子になって
おしゃべりや尻取り遊びをし、家から持ってきた固い干し柿を食べたりしたもので
す。

自転車で通う近くの森林公園の狭い空地にベンチが置いてあり、そこがひだまりにな
ります。団子になって遊んだ友人を誘っても来そうにもないので、一人でひなたぼっ
こをしようと思っています。冷たい風を遮る木々に囲まれたひだまりは電気によるエ
アコンにはない温もりを感じる特別の場所です。

現代の日本は、自然は観賞するもので共生するものではなくなっています。今の子ど
も達に私の昔の寒い経験をさせるつもりはありませんが、せめてひだまり(sunny
spot)という自然暖房の中で遊んで欲しいなと思っています。(水沼文平)

我が家の柿を啄んでいるヒヨドリの写真を添付します。

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