「スーパー銭湯」について

 私の小学生の頃、家に風呂がなく、近くの銭湯によく行っていた。家にテレビもなく、相撲の時間に合わせて銭湯に行った記憶がある。ただ、お金のかかる銭湯に毎日通えるわけではなく(銭湯に行くのは贅沢)、行けない日は家の盥にお湯を入れ行水をしていたように思う。
その後家風呂ができ、銭湯に通うこともなくなったが、近頃では家から車で10分のところに「スーパー銭湯」のようなものが2つできた。
大きなお風呂がいくつもあり、食堂やマッサージ室もあり、ゆっくり楽しめる。その一つは天然温泉でもある(千葉でも温泉が出る)。
値段も800円とそれほど高くない。子ども(孫)も好きで、時々一緒に行く。(www.raranoyu.jp/) (https://www.gokurakuyu.ne.jp/tempo/chibainage/ )

 今回、その「スーパー銭湯」の極めつけのようなところに行く機会があった。
それは、山梨県の笛吹市にある「石和温泉 薬石の湯 瑰泉(かいせん)」(https://www.yu-kaisen.jp/ )である。
天然の温泉で、宝石露天風呂、岩盤浴、プール、薬石ドーム、琉球漆喰の壁と畳のリラックス空間、TV・リクライニング付きの休憩室、食事処、タイ式ボディケア、庭園等があり、ゆったりと温泉と休憩と食事が楽しめる。
一番驚いたのは、24時間滞在が可能で、入館料は2100円(タオル、浴衣付き)と安く(会員になるとさらに安い)、リラックス空間やリクライニング室で宿泊することができるということである。
大広間のようなリラックス空間で、見知らぬ人と広いとはいえ,男女同室で(女性専用、男性専用室もある)同じ部屋に一緒に寝る(雑魚寝)どうかと最初思ったが(別料金で個室を借りることもできる)、実際寝てみると、琉球漆喰の壁と畳の部屋で、学生時代の合宿を思い出し、快適でもあった。

最近は、ホテルの部屋代も旅館も宿泊代が高騰しているなかで、このように安価で泊まれるというのは、庶民にとってはありがたい。(車のナンバーをみると、かなり遠くからも来ていることがわかった。)
翌日は、近くの昇仙峡(https://www.shosenkyo-kankoukyokai.com/)に寄り(車で50分)、山梨(県)を楽しんだ。

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追記
「スパー銭湯」もどき(?)に関して、卒業生のI氏がコメントを寄せてくれた。都内にもたくさんあるようだ。それに最近はやりのシェアハウスも似たような機能を持っていることがわかる。庶民は工夫して楽しんでいるようだ。

<薬石の湯に行かれたのですね。
http://kenkobaka.seesaa.net/article/413190786.htmlにも出ていました。(トップページは ttp://johnetsu.seesaa.net/)
都内だと蒲田の銭湯は黒湯の天然温泉で、460円で満喫できます。https://icotto.jp/presses/13944。
蒲田に限らず、都内は銭湯が充実しています(補助金がガッツリ降りているので)。東京駅から近いのは「八丁堀」駅より徒歩5分の湊湯(中央区)。ジャズがBGM。https://vokka.jp/11259 など紹介サイトも多数。
NHK ドキュメント72時間 1泊3千円のゲストハウスに密着 2017年11月17日 の回はなかなか面白かったですよ。動画視聴 URL はhttp://jp.channel.pandora.tv/channel/video.ptv?c1=&ch_userid=1162&prgid=55480347>

追記② 水沼さんより、下記のコメントをいただいた。
<「クモの巣」ではなく「クモの糸」にしたのは、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」が頭にあり、人の命を救う糸へのこだわりです。
宮城県には鳴子、作並、秋保、遠刈田などの昔からの温泉に加えて、仙台近郊には「日帰り入浴施設」があります。夏休みに東京から来た孫たちと作並温泉の岩風呂を楽しみました。広瀬川の岩盤を掘って作った風呂で、子どもの頃は広瀬川で泳いで温泉に浸かったものです。>

クモの糸に思うこと 水沼文平

嵐山光三郎著「漂流怪人・きだみのる」のP22、嵐山が八王子にある異臭漂う散らか
し放題の「きだみのる」の部屋を訪ねた時にきだは言う「部屋のクモの巣はとり払っ
てはいかんよ。このあたりはヤブ蚊が多くてな、クモはヤブ蚊や虻やハエをつかまえ
て食ってくれる。ヤモリも虫を食う。まあ、同居人みたいなものさ」。

これを読んで「家クモ」という言葉を思い出した。こどもの頃、家の天井の四隅にク
モが円い網のような巣を作っていた。母が「クモはヤブ蚊やハエを退治してくれるん
だよ」と教えてくれた。また母の生家の倉にアオダイショウが住みつきネズミを主食
にしていた。梁からぶら下がっているのを見たことがある。昔の人はクモを「神様の
使い」、ヘビを「家の守り神」として大事にしていたようだ。

築40年の和風平屋に移って8ヶ月、雑草だらけの庭にもテッポウユリやコスモス、ノ
ギク、アサガオの花が咲いている。鳥たちが絶えず目の前を横切り、トンボやカノコ
ガ(鹿子蛾)、チョウも飛んでいる。夜になると虫の集く音がいちだんと高くなって
きた。

育った故郷が一望できるので自然との一体感を求めて廊下の網戸をとり払った。そし
て二か所に「蚊取り線香」を焚いている。蚊取り線香は至近距離での殺虫効果はある
が蚊を寄せ付けないという効き目の方に着目した。しかし煙の合間を縫って蚊が家の
中に潜り込み時々刺されることがある。その痒さと腫れていく皮膚を見ていると故郷
に戻ったという実感が湧いてくる。先日は外で「ブヨ」に食われ、何十年振りかでブ
ヨという名前を思い出した。

きだみのるに触発されて、家の天井の四隅を点検したら二か所でクモが巣を張ってい
た。玄関の庇の下にもクモの巣があった。きだに習って「同居人」として大事にして
いきたいと思っている。

それにしても不憫なのはネコである。飼いネコは天井を走るネズミを知らずもっぱら
愛玩用として飼われている。毎日三匹の野良猫が我が家の庭に食い物をねだりに来る
が、これも半寄生的な生き方である。ネコは弥生時代から日本に住み着いていると言
われている。益獣としての長い歴史に幕を閉じ、これからどういう生き方をしたいの
かネコ達にインタビューをしたいものである。

動物学者にして社会学者、動物的な生き方をした「きだみのる」を知り、得ることが
多かった。一昨年の熊本地震、今年の近畿圏の大雨、そして今回の北海道の地震を考
えると、昔の日本人は地震、噴火、台風、津波などの自然の脅威に慄き、自然に対し
て畏敬の念を持ち、自然とは対立しない生き方(自然との共生)をしてきた。8月下
旬に陸前高田市に行った。6万本の松があった松原跡には、無駄としか思えない高さ6
mの堤防が延々と続き、3.11並みの津波(15m)にどう対処するのか、昔の街全体を
覆う10mの「嵩上げ」にも愕然とした。

残り少ない命を思うと、益虫だろうが害虫だろうが「一寸の虫にも五分の魂」という
言葉を大事にしたいという殊勝な気持ちになってきた。