困難を有する若者への支援

昨日(22日)、敬愛学園では全教職員が集まっての研修会が開かれ、その基調講演が 、中央大学の古賀正義氏からあった。講演はとても素晴らしいもので、出席していた300人以上の教職員は聞き惚れた。
私も「どうしてこのようないい講演ができるのだろう」と感心した。それは古賀氏の学 識と説得的な内容と絶妙な講演技術(話し方)によるものである。同時に氏の専門の教 育社会学的な考察(データによる解釈)も、多くの人に受け入れられるようになったのだと、うれしく思った。

講演のテーマは、「困難を有する若者の現状と支援―見えない未来に問いかける」. いくつか、心の残った考察を書き留めておく。
1 現代は人生の一定のシナリオや順序性が失われ、人が絶えず困難に巻き込まれる液 状化するリスク社会である。
2 現代は優秀な子が就職し、就職できない子が、大学院まで進学する場合がある。
3 若者が困難を抱える(ひきこもり、中途退学、フリーター等)の原因は、1つに特 定化できるものではなく、相互に多くの要因が重なりあっている。その原因と結果のとは表裏の関係にある。
4 ひきこもり事例にみる問題の複合性として、不登校、いじめ・友人関係の困難、受 験・就職の失敗、非行・暴力、発達障害、職場不適応などがある。
5 家庭や私生活で問題が起こると、学校にいくどころではなくなる。学校や教 師が嫌いになるわけではない。
6 高校中退の理由相互には関係があるが、その中核に「生活リズム」がある。生活リ ズムが確立していれば、中退に至らない。また、友人や仲間がいれば、中退に至らない場合が多い。
7 若者は長い期間悩んでいる。その悩んでいる期間に、援助の手を差し伸べられれば 有効である。
8 困難を有する若者の社会参加が重要。支援者や相談者が必要。つまり個人の資質や努力不足だけが問題ではない。地域コミュニティの支援資源の利用不能が問題である。脱個人化の視点が必要。
9 問題を「個人化」せず、「社会化」すること。問題の自己責任論や家族責任論を超 えて、学校・地域・家庭のネットワーク支援へ。

これまで我々は近代の論理で、個人の能力や努力で解決するのが自立への道と考えてき たが、ポスト近代の今は、人との協力、共同、共生、援助を求めることができる感性や能力(つまり「コミュニケーションの能力)が大事である。個人で無理に頑張らない、そして共同、相互扶助のしなやかな姿勢が求められている、と感じた。