敬愛大学「教育原論」 授業メモ(5月18日)

最後の試験のことを何人かから聞かれたのですが、教科書とプリントとリアクション(後でお返しします)の持ち込み可で、普段のリアクションのような内容になると思います。何かを、暗記する必要はなく、教育に関していろいろ深く考えて下さいという趣旨です。

今日は、これまでの2回の補足と、テキスト(『教育の基礎と展開』学文社)の第3章、発達の章を取り上げます。前々回と前回の皆さんが書かれたリアクションを少しコピーしました。上が前前回のもので、テキストの1章に関連して「夢十夜」のこと、「大きな木」のこと、母親なるものや父なるもの、日本的な子育てについて考えてもらいました。

次に、前回の「教育思想」に関するリアクションを見てください。 IMG_20160517_0001

教育思想に関しては、テキスト2章に詳しく書かれていますが、1年分くらいの内容を1回で説明しました。皆さんの理解力、意欲を信頼してのことです。次回には教育思想専門の方に来ていただき、講義してもらうことを交渉中です。そのリアクションにあるように、西洋の教育思想家の生きた時代が一目で分かるようにみなさんに年表を作っていただきましたし、その思想の概略も理解していただいたと思います。「近代の思想家」「啓蒙思想家」「公教育を普及させた思想家」「幼稚園教育」、「新教育運動」「内在的権力に注目した思想家」という分類まで書いてくれた人もいて感心しました。この中でも「ルソー」「デューイ」は、現代の我々の教育観に大きな影響を及ぼしていることがわかります。子ども中心の、実際の生活に根ざした教育が大事という考え方は、今の教育の基本にあると思います。また、個人の教育だけでなく、公教育という考え方も18Cに発生したことが分ります(コンドルセ、マン)。

今日は、テキストの第3章「子どもの発達から教育を考える」(藤崎春代著)を取り上げます。その最初の部分に、発達やレディネスに関して、とても高度なことが、ゲゼルやヴィゴスキーやピアジェの理論を紹介しながら書かれています(p26-30)。これまでの発達課題論やレディネスの考え方をさらに発展した内容だと思いますが、従来のハヴイガストやエリクソンの発達課題の理論も紹介しながら考えてみたいと思います。

「発達課題」というのは、「さまざまな年齢段階で達成することは必要とされる発達の内容」です。それが達成されると人は幸福になり、その後の発達課題も遂行しやすくなるものです。たとえば幼児が歩行できるようになれば、その次の課題も達成しやすくなります。言葉を覚えると、さらに周囲とのコミュニケーションができるようになります。エリクソンの場合は、発達を危機の乗り越えの過程と考え、乳幼児期に母親との関係で基本的信頼が得られず不信を抱くと、以後の人間関係に支障をきたすと考えます。ただ、「発達課題」がある時期に達成できないと取り返しがつかないと考えるのではなく、戻ってその達成を果たすことができると考えた方がいいと思います。

「発達課題」ということを身近なことで考えてほしいと思います。2つの質問をします。一つは、「小学校の時代に子どもが学んでおかなければならない課題は何でしょうか」 もう一つは、「高校時代までに学んでおかなければならない課題は何でしょうか」。勉強のことだけでなく、友人関係のことや、異性関係のことや、社会的な常識(マナー)なども考えて下さい。大学生の皆さんを見ていると、そんなことは高校時代の「発達課題」で、何で大学生の今頃やっているのとか、大学生がやるには早すぎるのではないかと疑問を感じることがあります。それで上のような質問を作りました。

次にこの章では、「仲間集団の中での学び」「2次的言葉」「教室コミュニケーション」と行った、保育園、幼稚園、学校などで、子ども達が集団のルールをどのように学んでいくのかについて、子どもの発達という観点もいれて、具体的に論じています。 それについて、藤崎さんが放送大学の番組で説明しているものを見て頂きたいと思います。

子ども達は、いつ頃、どのようなきかっけで、またどのような方法で、社会的なことを学んでいくのでしょうか。(その学びにつまずくということはどのようなことなのでしょうか。-不登校の原因を考えることもできると思います)。性自認(自分が男か女かを自覚する)するのは、何歳の時、どのようなきっかけなのかという研究もあります。子どもの発達から教育のことを考えるのは、興味深いことです。

追記 当日の学生のリアクションはこちら。1回の授業に4000円程度、皆お金を払っている<4年間の授業料400万円÷(133単位×7.5(1単位当たりの授業回数)=4000円)という話を最初にしたら、びっくりして、案外熱心に学生は話を聞いてくれた。前半の以前の内容の補足に時間がかかり、肝心の子どもの発達のことは、「発達課題」の説明で終わり、テキストの3章の話までいかなかった。

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