住田正樹氏の著書

 友人の住田正樹氏(放送大学教授、前日本子ども社会学会会長)が、これまで書かれた論文の中から「子ども」に関するものを集めて、1冊の本を出版した。全9章と補論からなり、総ページ数317ページ。
『子ども社会学の現在―いじめ、問題行動・育児不安の構造』(九州大学出版社、2014年9月刊行)

私の本(『学生文化・生徒文化の社会学」2014年)とは、くらべものにならないほどの厚さと重厚さ。

住田氏は、大学院で私と同期に近く、一緒のゼミで学んだ。大学院終了後は、香川大学に勤務の後、長く九州大学教育学部に勤め、多くの研究者を育てた。「日本子ども社会学会」の創設にも関わり、同学会の理事、事務局長、会長を歴任し、同学会をリードしてきた。本書の題は、『子ども社会学の現在』とあるが、日本子ども社会学研究に、大きな影響を与える著作となるであろう。
 その住田氏も、今年で放送大学を定年で辞められるという。どのような定年後生活を送られるのか。
「(買った)本を少しずつ読みたいと思う」(あとがき)と謙虚に書かれているが、氏の研究・教育意欲は依然旺盛なので、また、大きな本を出されることでであろう。

 大学退職前の思いと、大学退職後の実際の生活は、違いが生ずることも多い。大学院の同期に近い多くの友人が、主に働いてきた大学で定年を迎え、それぞれの働き方(暮らし)をしている。

時流(権力)との関係

今日(3日)の朝ドラで、時流(=権力)に対する態度が、花子と蓮子で違い、二人の友情は破綻するようなストリーであった。

時の権力(=時流)に、どのような姿勢を貫くかは、個人だけでなく大学にも問われている。
政府の教育方針に、大学がどのような姿勢をしますのか。文部科学省の方針に従順に従うのか、それとも大学独自の道を行くのか(後者の場合、現代でも、競争資金はもらえず、補助金などを削減されるような憂き目に合うことはある。)
過去の例で、昭和1ケタの時代(昭和7~8年)に、カトリックの大学の上智大学の学生が、学校軍事教練で、靖国神社礼拝を拒否し、陸軍省が怒って、配属将校を引き揚げさせ、上智大学の「幹部候補生資格と在学年限短縮の二大恩典を剥奪する」という措置を講じようとした事件があった。
その様子は、詳細な資料とともに、『上智大学史資料集〈第3集〉1928~1948 (1985年)』に、記録が残されている。
それに対する評価は、「上智大学はこの事件で存亡の危機に瀕したが、結局、全面屈服と引き換えに危機を逃れた。学長以下全校謹慎したうえ、学長・神父・学生がこぞって靖国神社に参拝した」(高橋哲哉「靖国問題」ちくま新書2005年、P.132~133)などと、評されている。
しかし、資料集を読むと、少しニュアンスが違って読める。表面的には、時の権力(時流)に屈したように見えるが、そこには、学生を守り、大学を存続させようとした大学執行部の苦渋の選択の跡がみられる。(この事件が、その後の上智大学の、時流(権力)に対する姿勢にどのような影響を与えたのか興味深い。)

時流に屈したように見える花子が、今後どのようになるのか、見守りたい。