村上春樹と江藤淳の共通点

人の好みに共通性(点)があるのかな,と思うことがある。
私の場合、ハルキストかどうかはともかく村上春樹の小説は好きでこれまでよく読んできた(本棚に村上春樹の本があると何となくうれしい)。またそれとは別に文芸評論家の江藤淳の書くものには惹かれ、その著作をほとんど読んだ。(とりわけ『成熟と喪失―母の崩壊』河出書房新社,1967年には衝撃を受けた)。
村上春樹と江藤淳は、全く接点も共通点がないと思っていたが、次のような事実を知り驚いた。
江藤淳は、1963年つまり30歳前後の若い時、プリンストン大学で2年間過ごし、日本文学史を教えているが、その体験がもとになり、名著『アメリカと私』(1965)と『成熟と喪失』(1967)を書いている。
一方その約30年後(1991年)に村上春樹はプリンストン大学に招かれ、日本文学の講座を担当するが(1992 年)、その時のサブテキストに江藤淳の『成熟と喪失』を使っている。これは、村上春樹が江藤淳を読み、その評論に影響を受けていたことを示しているのではないか。(ただ、その滞在記『やがて哀しき外国語』講談社,1994年)には、何も書かれていない)
江藤淳の『成熟と喪失』は,上野千鶴子も絶賛する名著で、私はこれまで学生や院生にかなり読むことを薦めてきたが、ハルキストの人にも是非読むことを薦めたい。何か、共通点があるはず。
参考サイト
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%91%E4%B8%8A%E6%98%A5%E6%A8%B9
http://d.hatena.ne.jp/fishriver3516/20120327/1332850471