本の礼状

黒沢英典 先生
秋の深まりを感じる今日この頃です。お元気にお過ごしのことと思います。
ご高著『ペスタロッチに還れ』(学文社、2015)をお送りいただき、ありがとうございました。先生の生涯をかけたご著作に感銘を受け、いろいろ学ばせていただいています。
ペスタロッチというと、何か難しい教育哲学の教育思想という印象がありましたが、先生のご本を読ませていただき、スイスの貧しい子ども達の教育に関わり、その子らに教育をほどこし生きるすべを与えた人として読むことができました。その教育思想は、日本の大正自由教育そして、敗戦後の日本の子ども達の教育の指針となったことを知りました。また、現代の子どもの貧困問題への大きな示唆になるように思いました。
「彼が最初に努力したことは、家庭的な雰囲気を子どもたちの自然的な発達の母体としてつくりだすことであった」(47ページ)という一節が心に残りました。まだ、浅い読みしかできていませんが、精読して、今教えている学生達にも紹介したいと思いました。
同時に、一人の教育思想家をこのように研究的に追うことができるという模範を示していただき、大変参考になりました。私も誰か、思想家の生涯を追いたくなりました。簡略ながら、御礼まで。               
                        10月10日 武内 清

上記の内容の手紙を黒澤先生(武蔵大学名誉教授)にお出しした。
黒澤先生は、私が武蔵大学に勤務していた時にご一緒していた方である。醒めた目で教育を考える私とは違い、教育に情熱をもち学生を熱く指導される先生で、 尊敬していた。その先生の背後にペスタロッチがいることが、ご著書を読んでわかった。
日本にもこのような教育学者はいるのかもしれないと思った。以前に、Mさんより、下記のメールをいただいている。
<9月26、27日と仙台の宮城教育大で日本教育史学会があり、海後宗臣に関するコロキウムで指定討論者の寺崎昌男先生の話を聞きました。この会で東大名誉教授の宮澤康人先生から、海後先生を尊敬する人から聞いた秘話が紹介されました。東京裁判の時、JHQから海後先生が「戦争に協力したか」と問われ「協力した」と潔く答えたという話です。参加者から様々な意見が出されましたが、海後先生の学問的な業績とその功罪を論ずるだけでなく、人格的な面からのアプローチがもっとあってもいいのではないかと思いました。なお海後先生の祖父は桜田門外の変の水戸浪士海後磋磯之介です。>
海後宗臣に関しては、下記も参照のこと
http://www.chu-ken.jp/pdf/forum13.pdf

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