地上波のテレビではなくネットの時代

映画やドラマの見方が今変わってきている。これまでは映画は映画館、レンタルのビデオ、テレビでの放送などで見るしかなかった。またテレビドラマは放送日に見るか、録画してみるしかなかった。今は映画やドラマはネット配信のものをテレビやPCで好きな時に見ることができるようになっている。従来型の見方をしている人も少なくないが、後者のネット配信を体験してしまうと、その便利さ快適さに惹かれ、後者に切り替える人が多くなっていると思う。(もちろん従来型で、テレビの「朝ドラ」や「大河ドラマ」のような、テレビの番組の放映時間が、生活のリズムになり快適さを感じている人はいる)

制作側の手順も変わりつつある。これまでは劇場用映画を作りそれがDVD化される、あるいは定期的な時間配信の為のテレビドラマの制作(その後DVD化されるものもある)であったものが、今はネット配信だけの為に制作されるドラマや映画が出てきて、斬新な脚本や俳優起用で、時代の先端を行くドラマや映画が作られるようになっている。一早くその方式を採用しているのが韓国ドラマだ。そのことを、下記の記事から知った。(一部転載)

日本のドラマが韓国ドラマに大きく差をつけられたワケ  藤脇 邦夫 PRESIDENT Online  https://president.jp/articles/-/52531

<なぜ韓国ドラマは世界中でヒットしているのか。『人生を変えた韓国ドラマ 2016~2021』(光文社新書)を書いた藤脇邦夫さんは「韓国には、2006年以降、次々と誕生したケーブル局が従来とは異なる意欲的な作品を作ってきた土台がある。スポンサーに配慮したドラマばかり作る日本とは企画力で大きな差がある」という――。/ケーブル局放送の登場が「韓国ドラマ」の質を変えた。/2000年代以降の韓国ドラマ史上、最大の変化は、何といっても2006年からのケーブル放送局「tvN」の開局、2011年からのCJENM経営による有料ケーブル局「OCN」のテレビドラマ製作開始、同年の韓国の新聞社4社(中央日報、朝鮮日報、東亜日報、毎日経済新聞)による総合編成チャンネル(同順に、JTBC、TV朝鮮、チャンネルA、MBN)の開局である。これによって、今まで地上波独占だったBS、SBS、MBC以外の局からのドラマ製作が可能になった。/2010年代の意欲的な番組はすべてこの3局から発生したといっていい。/日本における韓国ドラマブームは、俳優が話題の中心となった「冬のソナタ」出現の2003~10年を第1次とすると、2011~15年の第2次はシナリオ・発想・シノプシス・プロットの充実期であり、2016年から始まった第3次ブームは、K―POP人気に加えて、前出のケーブル3局の躍進が加わり、これによって「韓国ドラマ」のクオリティはアメリカ・ドラマに匹敵するほどの水準にまで引き上げられた。/そして、2019~21年の第4次ともいえるブームは、まさに第3次以降の成熟による一大ルネッサンス期──黄金期であり、「愛の不時着」「梨泰院クラス」「賢い医師生活」といった秀作を続々と生み出した。/現在、世界の映像ソフトの中で、テレビドラマ(ネット動画配信全盛の今、実はこの定義さえ怪しくなっているのだが、)に限っていうならば、最高峰は、アメリカ・ドラマと韓国ドラマといって差し支えない。/ネット配信の成否を左右するのはドラマ映像-第4次ブーム到来の理由として、次の2点が挙げられる。一つ目は先述したケーブル局と映像配信による、視聴環境の大幅な転換である。特に、tvN、JTBC、OCN等を始めとするケーブル放送局製作ドラマの一部をネット動画配信の最大手Netflixに配信委託したことにより、韓国ドラマの特異性を否応なく、日本も含めて、全世界の国、地域に強烈にアピールすることとなった./1963年のケネディ暗殺を告げる日米初の衛星同時中継、衛星放送の時代は彼方に去り、実質的に、現在世界の放送事業業態の趨勢すうせいは、電波事業から、インターネットを中心とした通信・配信事業に移行しつつある./テレビは既に単なる端末のモニターにすぎない-現在、Netflixで視聴している限り、韓国ドラマとアメリカ・ドラマは、視聴ソフト・コンテンツとしては、ほぼ同一線上にあるといっていいだろう./また、韓国・日本を問わず、今まで通常の流れだった、放送後にDVD化(レンタル・セル)という図式が崩れ、ネット配信等によって、最初から「ネット有料動画配信で視聴して終わり」という流れで完結してしまうと、テレビドラマを取り巻く視聴環境は一変する。/さらに、映像ソフトとしては、家庭でのテレビ視聴だけではなく、パソコンでもスマホでも視聴可能な(さらに映画館でも公開できる)「ドラマ映像」という意味に入れ替わっている/二つ目は、韓国ドラマにおける基本的なテーマの変容である。当の韓国でも地上波放送を見ているのは相も変わらず旧世代が多く、ケーブル放送ドラマは若い世代専門の作品だけではないにしても、特定の世代で共感を得た意欲的な作品が多いことは誰の眼にも明らかだ。/2020年に限っていうならば、先述の3作品を見た後で、地上波の家族ドラマを見ると、あまりにも古色蒼然なのに唖然あぜんとする。/まず企画ありきで、俳優をキャスティングする-俳優側の事情もある。地上波が従来のままのセオリーとパターンで同じ俳優をもとに企画を考えているのに対し、ケーブル局はまず企画ありきで、俳優のネームバリューに頼らず、企画に合わせて俳優をキャスティングするのが基本である。意欲的な作品を生む土壌は何年も前から整備されていたといえるだろう。/そういった視聴環境の変化に同調し、新たな視点で製作されたケーブル局から前述の傑作群が量産されていくのであれば、韓国・日本はもちろん、どこの国の視聴者も、従来視聴してきた「地上波の韓国ドラマ」だけでは満足できなくなる。>