先を読みたくなる小説、論文、本

知り合いの小林順子さんから、「三田文学」の最新号(2023冬記号)を送っていただいた。「三田文学」は慶応大学関係の文学者が書いている文学誌ある。昔江藤淳も編集委員をしていたことが由緒ある文学誌である。小林さんの書いた小説「伴天連・コロナ・ゴディバのチョコレート」が掲載されている。小林さんの小説が「三田文学」に掲載されるのは確か3作目。

その小説は、読み易く、ミステリー小説を読むようなスリルがあり、一気に読める、また読みたくなる小説である。カトリックの神父の話が中心で、世では新型コロナの蔓延が進行している時期でありその流れと、新潟の片田舎の教会に人間味のある神父の後任に着任した、杓子定規な冷たい新任の神父の行く末を描いたもので、この先どのようになるのだろうかという興味で、先を早く読みたくなるような小説だと感じた。また、主人公の日常の細部も、新型コロナの蔓延とコラボして、達者な筆使いで書かれていて感心した。最後の終わり方も、昔読んだ上級の小説の最後の余韻と同じものを感じた。

社会学や教育学の論文や著作で、先を読みたくなるようなものは少ない。以前に神野藤昭夫著『よみがえる与謝野晶子の源氏物語』(2022)を読んだ時、その先どのようになるのだろうと、推理小説を読むようなワクワク感を感じた(2022年7月14日ブログ参照)。そのようなものを社会科学の論文にも取り入れたら、大学の紀要も2~3人でなくもう少し多くの人が、本も強制的に買わされた授業の受講者だけでなくもう少し多くの人に読まれるのにと思った。