個人への関心、他者(集団)への関心

 学校の道徳教育の教える内容に4領域(自分、他者、自然、社会)がある。
放送大学の院生のKさんの研究で、「道徳教育で子どもに教えるのにどの領域が重要か?」と尋ねる質問を、教師と親(保護者)にしたところ、親(保護者)は「(子どもの)自分自身に関わること」を一番に挙げ、教師は「他者とのかかわりに関すること」を一番に挙げるという興味深い差が得られたという。
 このように、親と教師では、子どもに対する思いや対処の方法に違いがある。親はわが子のことばかり考え、自分の子どもがどう成長していくかにもっぱらの関心があり、親は教師がわが子にどのようにかかわってくれるのかに注目するのに対して、教師は一人ひとりの子どもの成長や教育に注目するにしろ、学級全体の雰囲気やクラスの人間関係のことが気になり、子ども達がクラスメイトと仲よくして、学級全体で成長していってほしいと願う。
 親はわが子(個人)を見ていて、教師はぅラス(集団)を見ている。子どもの立場も親と同じで、自分(個人)を見ていて、クラス(集団)は目的というよりは手段であろう。

 大学における教員と学生の意識の違いも同様にあるように思われる。教師は自分の授業やゼミの雰囲気の人間関係を見ていて、学生は自分のことを中心に考え、それに大学の授業やゼミ、また教師がどうかかわるかに関心がある。
 したがって、学生にとって、自分の名前も憶えない大学教師というものは、「許せない」と思うのは当然で、それに大学教師は気が付いていない(自分も含め)。