河口湖合宿研究報告1 企業内教育と学校教育について

先の河口湖で開催された研究合宿では、興味深い発表が数多くなされた。
公益財団法人・中央教育研究所所長の水沼文平氏の報告を、以下掲載させていただく。
これは、ある教育関係会社の幹部研修において、水沼氏が話された内容とのこと。含蓄のある言葉やフレーズがちりばめられている。

給料や収入以外の「目には見えない三つの報酬」についてお話します。それは「職業人としての能力を持てるという報酬」、「優れた仕事を残せるという報酬」、「人間として成長するという報酬」の3つです。
給料や収入は言うまでもなく、使い果たせば失われてしまう報酬です。そして、「役職」や「地位」も、その職を辞すれば失われてしまう報酬です。
それでは「職業人としての能力を持てるという報酬」はどうでしょうか。一人の人間が、永年かけて身に付け、磨いてきた能力は、それほど容易に失われることはありません。しかし、ときとして、技術の革新や仕事の変化のなかで、苦労して身に付けた能力が価値を失ってしまうときがあります。
「優れた仕事を残せるという報酬」はどうでしょうか。もし、その仕事が、建築物や製品などであれば、それは永く失われることがありません。また、その仕事が、形に残らないサービスなどであったとしても、そのサービスに触れた人々の心に永く残ることがあります。しかし、やはり、いつか建築物は壊され、製品も壊れていきます。そして、素晴らしいサービスの記憶も、いつか人々の心から忘れ去られていきます。このことを考えると、「収入」や「地位」という報酬はもとより、「能力」や「仕事」という報酬もまた、「いつか失われる報酬」なのです。
しかし、「人間として成長するという報酬」は「決して失われぬ報酬」です。仕事を通じて、心の世界を広げ、深めていく。仕事を通じて、人間を磨き、高めていく。そうして得られた「成長」という報酬は、我々が生涯を終える日まで、決して失われることのない報酬です。さらに、この「人間成長」という山の頂に向かって登る姿は多くの後輩に見つめられ、決して失われない報酬として、受け継がれていくものなのです。

教育に関わって仕事をしている我々ですから「人間成長」に結び付く学校教育での「真の学力」についても考えてみたいと思います。
日本は長い間「知識・技能」で児童・生徒の能力を図ってきました。それがグローバル社会に通用する人材の育成のために「思考・判断・表現」の能力が必要となり世界標準の学力テスト「PISA」に参加するようになりました。文科省が行っている問題Bでは「意欲・関心・態度」が問われています。
しかし「勤勉性、協調性、社会適応力、信頼性、忍耐力、創造性」などの非認知能力は現在の学力調査では計測が困難です。このような能力は人が社会に出て成功する上で最も必要なものであり、学校教育の中での能力の育成が重要となってきます。
次に、グローバル社会・情報化社会において世界に通用する「日本型学力観」について考えてみたいと思います。その学力観の根底に日本人が大事にしてきた「自然への畏敬の念」や「生命の尊重」を置きたいと思います。そこには世界に求めれれている自然保護、平和、共存などの理念があります。偏差値教育からの脱却、非認知能力を含めた子どもの育成、そして、異文化を理解し優れた国際貢献力を持った人材を育成することが大事だと考えます。

それでは幹部として部下にどう接していくか具体的にお話します。一方的な通達では部下は育ちません。相互コミュニケーションが取れてこそ部下は管理職の意図するところを理解していきます。また、部下一人ひとりに対する適切な質問を通じてのカウンセリング能力も学習効果を高める力があります。
さらに、部下を動かすには、「率先垂範」「納得」「体験」「褒賞」の四つが必須となります。そのためには、皆さん方の考え方を変え、習慣を変え、品性を変え、生き方さえも変えなければ、部下は心からついて来ないということを肝に銘じてください。(水沼文平)
参考文献:「仕事の報酬とは何か」著者 田坂広志