「受けた恩は、きっちり返したい」!

以前に書いた「受けた傷は、きっちりと返したい」といういい方は、舌足らずで、誤解を受けやすい。補足しておきたい。
そこで私が言いたかったのは後段の「このような心情も、時間と共に、忘れ去られことも多い」「長い年月が経つうちその恨みは忘れ、さらにその人に親しみすら感じている自分を発見することがよくある」ということである.

さらに、その裏の側のことを言いたかった。つまり、「受けた恩は、きっちり返したい」ということである。
他人が自分に対して、してくれたことを、すぐ何らかの形で返礼ができればいいが、それができない場合も多い。その場合は、きちんとその恩を覚えておいて、一生をかけても返したいと思う。

ただ、このことは、逆に報恩を期待するということではない。
江戸の昔から、江戸っ子は、地方から出てくる人に、見返りを期待しないで便宜を図ってきた。それが江戸(東京)の文化である。(その文化が利用され、気がついてみれば、東京人が排除されることはよくある。しかし、それは江戸(東京)の文化なのだから、恨んではいけない〈江藤淳〉)

優位に立つものは、劣位にいるものの面倒をみるのは当然で、それに見返りを期待してはいけない。しかし、劣位の時に受けた恩は、将来力を付けた時に返すのが、礼儀である。この礼儀を忘れないようにしたい。