大学の教育の質を何で計るのか

朝日新聞の1月17日朝刊「私立大学が探る未来像」で、金子元久氏の「中小大学の努力、もっと評価を」という趣旨の次のようなコメントが載っている。

<今回の調査(ひらく 日本の大学」)は、ST比が低い、中小規模の地方大学が積極的に、教育面の改善に取り組んでいることを明らかにした。地方の中小大学の多くは定員を満たすことに苦しんでいるが、そんな大学こそ元気を出してほしい。ST比が低く、少人数だからこそできる取り組みを一生懸命やることは、学生にとっても、社会にとっても大切だ。中小大学の地道な努力を社会はもっと評価すべきではないか。>

ST値とは、学生数/教員数(専任)で,国公立や私立でも小規模大学で小さく、きめ細かい教育や学生に対する指導がなされている指標とされる。
このST値があまり注目されず、それが学生の選抜(入学)と結びつていないのが、日本の大学の問題と金子氏は指摘する。
確かに、朝日新聞の「大学サーチくん」*で調べると、ST値が低い大学が偏差値の高くなるわけではない(たとえば文学部系ST値は、偏差値の高い順に上智大学37.3 同志社大学43.9、、敬愛大学23.5)。敬愛大学のようなST値の低い小規模の地方大学の教員の努力を評価してほしいものである。

ただこのST値は教員数を専任教員の数でカウントしているのに多少の問題を感じる。
実際の日本の大学の授業は非常勤講師が担当する割合がかなり高い。非常勤講師の授業が専任教員の授業より熱心さや質で劣るわけではない。かえって「よそだから自分の大学の授業以上に熱心にやろう」と思う教員や若く熱心な非常勤講師も多くいるはずである。
したがって、学生と教員の数から教育の質を測るのなら、各授業の学生数の平均ないし、小規模授業やマンモス授業の比率を出し、それを指標にすべきではないのかと思う。

(*朝日新聞デジタルでは、受験生や高校関係者が関心のある大学について調べられる検索サービス「大学サーチくん」のデータを更新しました。各大学の学部ごとのST比や初年度納入金などのほか、今回からは奨学金や授業料減免制度など経済的支援と、その大学ならではの特徴的な教育の取り組みも見られるようになりました。教育ページのアイコンをクリックすると、検索画面が開きます。URL(http://www.asahi.com/edu/hiraku/search/)を入力しても同じページが見られます。「ひらく 日本の大学」のページ(http://www.asahi.com/edu/hiraku/)では、ST比と「きめ細かい教育」の詳報のほか、各大学が重視している役割などについての調査結果もご覧いただけます。)